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04 LIFESTYLE

天野喜孝のアートを堪能する
『AmanoGalaxy Night for Faust A.G.』開催

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 去る8月末日、穏やかな風が秋の気配を漂わせていた夜――、ファウストたちが表参道に集った。この日、表参道ヒルズB3Fにある「スペースオー」では、現代画家として国内外で多くのファンを持つ天野喜孝氏による展覧会『AmanoGalaxy』がスタート。アニメやゲームのキャラクターをモチーフにしながら、宇宙の始まりや終わり、神の世界を描く壮大な世界観を表現するアート展として注目され、初日から多くの来場客が押し寄せる盛況ぶりだった。午後19時。会場がクローズされると、そこはたちまちエクスクルーシヴな空間へと変化した。ファウスト会員だけのために企画されたカクテルパーティ『AmanoGalaxy Night for Faust A.G.』 の幕が開いたのである。

上/『Deva-Loca』は“神々の住む場所”という意味を持つ。この作品はビッグバン、天地創造を表しており、「この真ん中の女性はパンドラの箱に残った希望のようなもの」と天野氏。これまでの活動の集大成であり、細部には彼が手掛けてきたキャラクターが描かれている。このカンバスは無限大で、今後もここからさらに絵を広げていくという。

日本のアニメやマンガは
リスペクトの対象


上/天野氏は、イベント前に会場でライブペインティングを披露。描くスピードはとにかく速い!下/完成した作品は、未来の秋葉原をイメージ。「海外ではよくライブペイントをさせてもらいます。自分では絵の出来はどうでもよくて(笑)、描いていることがとにかく楽しいんです」。

天野喜孝氏の絵画はここ数年、現代アートとして高い評価を受けており、特に海外からの注目が大きい。「日本のマンガやアニメはアートである」と、海外が捉えるようになったのは1990年代後半からが顕著で、天野氏の場合も例外ではない。“日本のマンガやアニメを、アートの文脈で解釈する“という概念が広く認知されたきっかけは、2002年にNYクリスティーズで、村上隆の作品「Hiropon」が、38万ドル(当時約4890万円)で落札されたときだろう。しかし、その前後で海外のアーティストは、日本のアニメやマンガを自分たちの作品に取り入れるという手法を試してきた。たとえばフランスのテクノユニット、ダフト・パンクは『銀河鉄道999』などで有名な漫画家・松本零士にセンセーショナルなPV製作をオファー。また、映画監督クエンティン・タランティーノは『キル・ビルVol.1』のアニメパート製作を依頼するために、日本屈指のアニメ製作会社「プロダクションI.G」を自ら訪問するというアプローチを取った。このように、日本のアニメやマンガはここ10年余りでアートとしての地位を得ている。

今回の『AmanoGalaxy』で注目すべきは、この展覧会が秋葉原ではなく、流行の最先端を反映する街・表参道で開催されたということ。まさに日本のアニメやマンガがアートとして昇華しているということを証明する機会だったのだ。ファウストたちにとっても、この『AmanoGalaxy Night for Faust A.G.』 を通して、天野氏から生まれる幻想的な世界がアートとして確立されていることを、深く感じる一夜だったのである。

天野氏自身も実感する
「表参道」の意味

「ちょうど先日、サンフランシスコで展覧会をやってきたばかりです。そこでは日本カルチャーの発信地である“原宿”がテーマでした。擬似的な原宿だったわけですが、今日の会場は表参道ということで、リアルな原宿で開催していることになります。不思議ですね。とても驚きました」――パーティの最中、会場に姿を現した天野氏は、今回の展覧会についてそう語ってくれた。カルチャーの発信地として海外からも注目される表参道。ここで展覧会を開催するということが一体どんな意味を成すのか、彼自身も感じていたのだ。

会場内では、世界を舞台に日本人として生きる天野氏の姿勢が読み取れる作品が一際目を引いていた。それが『Creation』だ。スカイブルーの背景に、雲からインスパイアされたというヒーローたち12人がダイナミックに描かれている。「これはとても東洋的な作品です。欧米を訪れると、宗教画や神話世界をモチーフにした芸術をたくさん見ることができ、どれも素晴らしいですよね。でもそういう世界を自分が描いても仕方ない。だから、仏教の世界と宇宙の真理を表してみました。これはいわゆる十二神将を描いています。中央にいる人物は大日如来。その周りにほかの十二神将がいるという世界です」。なんと未来的な天野版十二神将だろう!「仏教の世界は、時間の概念がないと思うんです。現在、未来もなく、太陽のように未来永劫変わらないもの。そうだとしたら、十二神将もどんな姿をしていてもいい」。

宇宙の真理と十二神将を描く『Creation』。記事トップにある『Deva-Loca』とは対の作品となっており、『Creation:』は光と秩序、『Deva-Loca』は闇と混沌を表している。

「でも――」と、天野氏は続ける。「この会場には『Candy Girl』をはじめとした、可愛い女の子を描いた作品もたくさんあります。そちらにもぜひ注目してほしいんです。なぜなら、この展覧会が『AmanoGalaxy』と銘打っているのは、会場全体が宇宙船であり、作品を窓枠に見立てているから。そう意識して作品を見ると、作品の中のキャラクターが窓の外、つまり宇宙にいるみたいに見えます。特に大きなカンバスに描かれた女の子を見ると、自分が小さくなった気分になれますよ。彼女たちに包まれたら気持ちいいだろうな……なんて思っていただければ本望です(笑)」。シリアスさ、クールさのなかに茶目っ気たっぷりな遊び心を持ち合わせる天野氏。彼の作品の幅広さと根強い人気は、まさにそこに由来するものなのだろう。

左/まるで宇宙空間を遊泳しているような『Candy Girl』。不思議の国のアリスが大きくなってしまったときのイメージから発想している。中/『Miroku』と同じ十二神将ヒーローのひとり『Fudou』。右/『Creation』のなかに登場するという設定の『Miroku』。

蘇る、
天野氏のヒーローに憧れた少年時代

この日、会場に集ったファウストたちの中には、天野氏の生み出してきたヒーローに憧れを抱いた少年時代をすごした面々も少なくなかった。アニメキャラをモチーフにした作品と対面しながら「小さい頃『ガッチャマン』のケンになりたかったんですよ」「あ、この絵はもしや『ヤッターマン』のドロンジョ様ですよね?」という、昔を懐かしむ彼らの声も随所で聞こえていた。一方で、縦3メートル×横16メートルの巨大パネルに描かれた『New York Night』や、自動車に使用されるアルミ素材の上にカラー塗装を重ねるという彼独自の作画方法による『Deva-Loca』などに対しても、あまりの壮大さに感動せざるを得ない様子。「買うとしたら、どの作品に?」と、真剣に考えこむファウストの姿もあった。

会場いっぱいに飾られた、大小約30の作品たち。それらに魅了されながらファウストたちは、アート展『AmanoGalaxy』の世界観、そして表参道で開催されたことの意味を深く感じることができたことだろう。この夜、ファウストたちにとっての芸術の秋が豊かに色づこうとしていた――。

天野氏の絵画を鑑賞しながらのカクテルパーティ。
縦3メートルx横16メートルの超大作『New York Night』。天野氏がNYに滞在していた頃、街の日常風景からインスパイアされたものが凝縮されている。

Profile

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天野喜孝
Yoshitaka Amano
1952年、静岡県生まれ。67年、『竜の子プロダクション』に入社。『科学忍者隊ガッチャマン』や『みなしごハッチ』、『タイムボカン』などのキャラクターデザイナーとして活躍した後、フリーに。数々の小説の挿絵を手掛け、そのファンタジックな作風で注目を浴びる。87年よりゲームソフト『ファイナルファンタジー』のビジュアルコンセプトを担当。また、現代アート画家としてその後も出版、舞台美術、映像など幅広い創作活動を行っている。国内をはじめ、アメリカやドイツなどでも個展を開催しており、国内外のさまざまな賞を受賞している。

http://www.so-net.ne.jp/amano/

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