
Hiraide Kazuya
平出和也
アルパインクライマー
未踏の絶壁の向こう側
日本に世界的な「アルパインクライマー」が存在することをご存知だろうか。有名な山を制覇することを目的とした「ピークハンター」とは異なり、酸素や固定ロープを使用せず、他人のサポートも受けずに、最低限の道具のみ使い自分たちの力で困難な岩壁に向かう、数少ないアドベンチャラーだ。
そして誰も登っていない未踏のルートにトライし、クライミングという行為をよりクリエイティブなものに昇華させた功績が世界的に評価され、世界のトップクライマーの一人に名を連ねるようになったのが平出和也である。
平出は2008年、インドのカメット峰の南東壁をパートナーの谷口けいとともに世界で初めて登攀し、その功績を称えられ登山界の最高の栄誉ともいわれる「ピオレドール(金のピッケル)賞」を日本人として初受賞した。
アルパインクライミングは数百mから数千mにも及ぶ岩や氷や雪の壁を最低限の装備で挑戦するという登山スタイルであり、通常の登山とは異なる。さらに未登攀のルートでとなればその難易度は想像の域を大きく超えている。気象の知識、登攀の技術とともに体力、知力、精神力を総動員してかからないと生命を危うくする。それを「クライミングは遊びですよ」とこともなげに言う彼はいったいどういう人なのだろうか 。