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Vol.37
夜空を旅する
Poznan, Poland/ポーランド・ポズナン

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

夏至の夜空に浮かべられた無数のランタンが、まるで宇宙に吸い込まれるかのように空に消えて行く。その様子を見上げる人びとの表情は、ランタンのほのかな明かりに照らされ、穏やかで優しい笑みに覆われている。この日はポーランド北部の街ポズナンで、夏至の日を祝い人びとがランタンを浮かべる祭り。日中はあいにくの雨だったけれども、日が暮れる夜10時過ぎに雨はあがり、多くの人がランタンを片手に広場に集まってきた。。

人はそれぞれ何を思い、夜空に明かりを浮かべるのだろう

人びとの手を離れた明かりは、始めは地表近くを何か逡巡するかのように漂い、やがてふっと意を決したかのように夜空の闇へと舞い上がって行く。いくつものランタンが同じように浮かび上がり、それはやがて光の奔流となる。無数の光が体を包み込み、やがて自分自身がその中のひとつの明かりとなり、一緒に無限の宇宙へと旅立つような感覚が訪れる。すべてを忘れ、そのまばゆい星々の流れに身を任す

今ここが何処なのか、そしていつなのか、そんなことがすべて溶け出し、曖昧になり、意味を持たなくなり始める。自分自身の存在を体内に閉じ込めている肉体が消え去り、宇宙に溶け出すような感覚。あの一体感。

あのときの心の高揚感が忘れられない。
いまこの日記はその翌日に書いているのだけれども、昨日のあの非日常的な空間がもたらした不思議な感覚は、いまもこの体内に何ともいえない余韻を残している。

やがてランタンは夜空の彼方へ消え去り、空にはわずかなオレンジ色の点が残るのみとなった。それもやがていつかは宇宙の闇へと消え去るのだろうけれども、その明かりは、いつまでも見るものの心の中に残り続けるのかもしれない。

夏至の夜空に浮かぶ無数のランタンは、宇宙そのものであった。
この日、星になって夜空に浮かび、宇宙の一部になったような気がした。

不思議な体験だった。

 

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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