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Vol.34
東へ
Porto, Portugal/ポルトガル・ポルト

写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。

崖の上から見下ろす大西洋は、どんよりと曇った重たそうな空を反射して灰色に沈んでいた。海から吹く風は、ユーラシア大陸の西の端の岬に荒波を運んで来る。その様子を、飽きずにいつまでも眺める。冷たい風に負けて立ち去ろうと思うのだけれども、あともう少しだけ、と何度も繰り返し、同じ場所に佇んでいた。

ポルトガルのロカ岬に立ったとき、不思議な感じがした。これまではずっと日本から遠く離れた土地を追い求め、旅して来た。もっと遠くへ、もっと深く。そう思って来た。ここポルトガルももちろん日本から遠く離れている。でも、岬の突端に着いた時、ここはもう日本へつながる場所なんだ、ということに気がついた。ここからまっすぐどこまでも東に行くと、そこに日本がある。ついに帰る時が来た、という実感が込み上げる。日本という国を出て世界へと旅立ち、そしていま日本へ向けて帰る旅が始まろうとしている。

荒々しいロカ岬から見渡す大西洋は、限りなく広かった

かつて大航海時代、コロンブスはこの大西洋を越えた先にインドがあると主張し、帆を上げ風を掴み、幾多の波と苦難を乗り越えていった。辿り着いた先は残念ながらインドではなくアメリカ大陸だったけれども、それはそれまで歴史の陰に隠れていた新たな大陸が表舞台に出て来た瞬間だった。

その冒険に自分の旅を重ねて、さあ自分も頑張るぞ、なんて語るほどこの旅は大げさではない。コロンブスの時代に比べて、いまの世界は少々狭くなりすぎたし、何より自分はコロンブスではない。大航海時代のような冒険旅行はできないけれども、自分には自分の旅があり、その自分だけの旅の軌跡を大切に日本まで戻ろうと、砕ける波を眺めながら考えた。

これから8ヶ月、日本目指してひたすら東へと向かう。
道に迷い、自分自身に迷い、旅に迷ったら、とりあえず陽が昇る方角を目指そうと思う。

西の果てで、東の果てのことを考えた一日だった。

 

写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。

「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま

 

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竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com

著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)

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