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有人ソーラー飛行機　
スイスからモロッコへ－大陸間の飛行に成功

太陽エネルギーだけを動力とする有人飛行機で世界一周を目指す「ソーラー･インパルス」が、初めての大陸間の飛行に成功した。

今年の挑戦は“ミッション2012”と名づけられ、2月には、3日間の昼夜連続シミュレーション飛行に成功。そして6月に行なわれたのが、スイス西部にあるパイエルヌ飛行場を出発して、整備･点検のためにスペイン･マドリッドを経由し、アフリカ大陸のモロッコ・ラバトへ向かうというプロジェクトだ。この飛行は、モロッコ太陽エネルギー庁（Masen）の招きによるもので、ワルザザード地区における世界最大の太陽光発電所の工事施工にあわせて行なわれた。

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モロッコ･ラバト到着の瞬間。多くのジャーナリストがその瞬間を見るために集まった
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まず、パイロットのアンドレ・ボルシュベルグ氏を乗せた飛行機は、5月25日、現地時間の5時22分にパイエルヌ飛行場を離陸。フランス南西部、そしてピレネー山脈を高度7833mで通過。17時間3分50秒の飛行後、翌日の1時28分に、マドリッド・バラハス国際空港に着陸した。飛行距離は1191.39kmに及んだ。

左：操縦席の準備をするスタッフたち。中：テイクオフ前に最後の確認をしあうパイロットのアンドレ・ボルシュベルグ氏とベルトラン・ピカール氏　右：マドリッドに無事到着。

そして6月5日5時22分、いよいよスペインからアフリカ大陸のモロッコに向かってゆっくりと離陸した。ジブラルタル海峡、地中海の上空を越え、モロッコのラバト・サレ空港には同日の23時30分に到着。闇に包まれた真っ暗な滑走路に淡い光を放つ「ソーラー･インパルス」機が、静かに舞い降りた。830kmの距離を19時間8分で飛行、平均時速は51.8kmだった。

このマドリッド－ラバト間は、同プロジェクトを率いるベルトラン・ピカール氏が初めて操縦するという、記念すべき飛行でもあった。コックピットの扉を開けて立ち上がり、鳴り止まない拍手とカメラマンのフラッシュの中で、「歓迎ありがとう」と笑顔で声援に応えた。

「ジブラルタル海峡を超えた時は魔法のような時間であり、航空業界に携わってきたこれまでのキャリアの中でも最高の瞬間だった」とピカール氏。ボルシュベルグ氏は「大陸間の飛行は、プロジェクト進行のために大切なステップとなった」とコメント。ほぼ20時間に及ぶ飛行の後も、バッテリーの充電は十分に残っていたとのことで、「我々の技術への信頼性を増すことになるだろう」と話していた。

左：ラバト･サレ空港に離陸する瞬間中：空港には多くのジャーナリストが詰め掛けた　右：探検家クラブの旗を掲げるピカール氏とボルシュベルグ氏　トップ写真はモロッコのラバト・サレ空港の上空を飛行する「ソーラー･インパルス」

左：離陸前にミーティングを行うピカール氏とボルシュベルグ氏中・右：テイクオフ前の準備中

左：離陸した直後　中:モロッコに向かう上空　右：離陸後、集まった観衆にガッツポーズで応えるピカール氏とボルシュベルグ氏

今回「ソーラー･インパルス」を招聘したモロッコは太陽光発電や太陽熱発電といった太陽エネルギーにより、2020年までの間の総出力目標を最低2000MWとし、3700トンのCO2を削減するという目標を設定している。「ソーラー･インパルス」にとって、こうした積極的な取り組みを行なう国との“コラボレーション”は、2014年に目指している世界一周に向けて、心強い新たなパートナーシップを確立したといえそうだ。