HOME > ROAD > Road to Le Mans ~ル・マンへの道~ > Vol.9 3度目の鈴鹿500km。初の総合シングル、6位を獲得!

画像

Vol.9
3度目の鈴鹿500km。初の総合シングル、6位を獲得!

2010スーパー耐久シリーズ第3戦、鈴鹿500kmレース。
ファウスト・レーシング・チーム(以下Faust.RT)結成3年目となる今シーズン、鈴鹿での戦いも、3度目を迎えた。ドライバーの技量が試されるテクニカルなコースを舞台に、ル・マン24時間出場を夢みて挑み続けるプライベーター達は、予選4位通過で決勝6位という過去最高の結果を残すこととなった。

菅生から中2週、鈴鹿に臨む体制

Faust.RTがスーパー耐久に初めて参戦した2009年、その開幕戦を戦った場所が鈴鹿だ。プロアマ、四輪、二輪を問わずレースを志すものにとっては聖地でもある。1年目の最初のレースを、Faust.RTはドライバーもチームも手探り状態の中で、初戦完走17位という結果を得た。2年目は完走し順位を上げ13位だったものの、ドライバー達は自分達の技量の未熟さを思い知らされている。3年目の鈴鹿では、ル・マンへ向けて、完走以上の手ごたえ、そしてドライバー自身の成長度を量る格好のチャレンジとなる。





ドライバーは2010 シーズン、Faust.RTの初戦となった菅生ラウンドと同じメンバー、堀主知ロバート、岡本武之、山野直也の3名。

堀は、この「ル・マンへの道」への核となるドライバーで、IT企業グループの会長兼CEO。スーパー耐久への参加を決めてから、仕事の合間を抜って唯一人10戦エントリーしている。20代でカート経験が数年あるが、起業して成功後もレースへの情熱は冷めることなく、数年前にクラシックカーレースに参加。それが、眠っていた気持ちに火を付けた。

岡本は、前戦の菅生から連続参加の2戦目。やはりカートがモータースポーツに関わるきっかけだったが、大学卒業後は証券会社に勤務、仕事に専念、その後、起業し投資会社社長となった。2007年から、プライベーターとしてレースに復帰。フォーミューラートヨタからレースを始めるという、本気度満点のドライバー。

菅生に続き走る山野は、ブレーキの専門メーカーであるプロジェクト・ミューで開発を努めるプロドライバー。2007年にはそのプロジェクト・ミューからスーパー耐久に参戦、激戦のST-1クラスで、現在Faust.RTが駆るポルシェに乗り、年間3位を獲得している。今回もマシンのセットアップに協力してもらうことになっている。

練習走行後、その山野にマシンの状態を聞くと、「2007年に、このクルマに乗った時とタイムは一緒、調子は戻っていますよ」と太鼓判を押してもらった。「ストレートで最高速が20km/h違うポルシェ997に比べて4秒落ちなら悪くない」とも付け加えてくれた。

2010 Faust.RTが使用するマシンはポルシェ996GT3-JGN。実に9年落ちモデルだが、レース専用として市販されたモデルで耐久レースでの信頼性は高い。前走、菅生でのトラブルは排気系のものでエンジンに不備はなく、金曜日に行われた練習走行でも調子は良く、午後の最終セッションでは2分13秒台のタイムも出していた。トップカテゴリーのST-1クラスに参加するチームとして、ST-2クラスのマシン達を封じ込めるには足りる時計だ。

3年連続の
ドライコンディションの予選

5月29日土曜日。予選、決勝を同日に行う1DAY開催の菅生では、ピット内がいつも慌しかったが、ここ鈴鹿で行われる500kmレースは2DAYイベント。土曜が予選で日曜が決勝。いくつかのレースが併催で行われるため、マシンさえ仕上がっていれば、予選日は比較的のんびりとしたものとなる。

Faust.RTのマシンには特別問題もなく、セッティングも決まり、ルーティンの整備を行ってピットはスタートを待つだけの状態。コースでは昼休みの時間を利用したピットウォークが行われており、チームのピットには、Faustの会員をはじめ、レースで知り合った人々、個人の応援団など何人もの来客が訪れ、なごやかムードがピットを支配する。

ピット前にレース車両を並べ、ドライバー、レースクイーンが観客を迎えるという華やかなピットウォークが終わり、テキパキとコースインの準備を始めるメカニック達。1stドライバーである堀が乗り、細かな調整を行いエンジンに火が入る。爆音がピット内に響く。金曜日の練習走行より気温、路面温度は上昇しているものの、コンディションはグッド。堀の予選アタックが始まる。

フレッシュタイヤの場合、一番タイムの出せるのはコースインした次の周回だ。タイヤの使い方にもよるが、タイムが出るのは、せいぜい2~3周程度だ。堀はその1発目で、2分16秒042のタイムを出す。予選上位を確実にするタイムだ。ところが、そこからタイムがまとまらない。2周目2分17秒222、3周目2分18秒530。1周目のタイムで堂々の4位だが、ピットに帰ってきた堀はグローブを床に叩きつけ、自分に対して怒りをぶつけた。

チーフの志村が、堀のところに駆けつけ、
「最初の年は22秒、条件は違っても、今年は同じマシンで16秒だからね。年間通して走ってるわけじゃないからね、たいしたもんだよ」と、堀をなだめた。
堀は「S字でハーフスピンするし、そこいらじゅうで横向きまくり、ダンロップで、デグナーで、130Rで・・・」と反省モードから抜けられない。
「慎重に走ったのがベストラップ。無線で16秒台と入ったんで、よっしゃ!と思って、そこからが、から回り。14秒台は見えてるのに、腹立つ~」とイライラを隠さない。次のドライバーの岡本へ、「オレより速く走って、よろしく」とバトンを渡す。

次をまかされた岡本は、堀の言葉を受けるように、最初のアタックで2分15秒974を出す。ところが、2周目以降タイムは伸びなかった。岡本は「アタックラップの130Rで、3クラスのZに詰まっちゃった。あれがなければあとコンマ5は…。でもアウトラップの前車との間隔のあけ方が悪かったので自分のせいです」と笑っていたが、その顔は堀と同じく悔しさを隠しきれずにいた。2人が悔しがる理由は、前日のフリー走行で山野が出した2分13秒台のタイムだった。このタイムにもっと近づきたかったのだ。キャリアもテクニックも桁違いのプロに、勝つことはおろか近づくことさえも決して容易ではないことは十分にわかっている。それでも、少しでも、コンマ1秒でも近づきたい。速くなりたい。いつか追いついてやる。この気持ちが今期のFaust.RTのアマチュアドライバーたちのモチベーションを高めているのだ。

スーパー耐久の予選はAドライバー+Bドライバーの合計タイム。二人とも一発ではあるが、キッチリとST-2クラスを押さえて予選4位を確保。プロドライバー達がひしめく上位陣の中で、マシンの能力から見ればベストポジションの4位を獲れたことは、賞賛に値するものだ。チームとして予選で本気にタイムを出すだけなら、一番速いプロの山野を走らせればいいだけのことだが、そこが他チームとはアプローチの違うところ。

Cドライバーの山野は、さすがにプロというべきだろう。1発目のアタックで14秒003を出した後、セッティング変更のためのピットインをはさんでもコンスタントに15秒台を3本揃え、経験の違いを見せる。2007年、同じポルシェでS耐を走った山野のアドバイスは、堀、岡本にも大きく影響を与える。しかも今回は総監督の見崎が来ているのだから、ドライバー達のテンションも上がって当然だろう。

総監督の見崎によるコーチング

見崎清志。トヨタの元ワークスレーサー、日本のレース創世記に活躍した伝説のドライバー。サーキットに現れれば、もちろん「顔役」である。Faust.RTの総監督として久しぶりに鈴鹿に登場、予選の堀の走りを見ていた。予選終了後に堀と予選の走りについて語る。

見崎「気持ちが先にいっちゃだめ、どうしても気持ちが2-3LAP先にいってしまうな。予選だから、ニュータイヤだからと思うのはダメだね、冷静に走ろう」と堀のたかぶる気持ちを抑える。
堀「観客の顔は、よく見えたんですけどね」(笑)
見崎「気持ちを抑えるには1LAP目のクールダウンが大事だよ」
堀「思いっきりゆっくり走った1周目がベストラップで16秒。で、イキみまくり」
見崎「テクニックの問題じゃなく、気持ちのコントロールをしないと。ニュータイヤだから、普通に走ってタイムは出るからね。テンパることなく、ゴルフとおんなじに考えればいい」
堀「スタートホールで軽く打ってボール飛んでいったから、ロングコースで行けるなと思ってOB…」
見崎「常にリラックス。予選は練習の再現だから。練習の時には力が入らないじゃない、それで行かなきゃ」

精神面だけでなく、走りのイメージもプラスしてアドバイス。
見崎「適切なスピードでクリップに入っていく、その時には何もしなくていい。何もしないことをコントロールする。向きが変わったら踏んで、自然にアウトまでふくらんで行く。その感覚がわかってくると気持ちいいハズ。感覚は練習からつかむしかないんだ」
途中から岡本も、山野も加わり、走行データを見ながら、コースの攻め方を研究する。ドライバー達の輪がしばらく解けることはなく、予選日は終了した。

決勝は3時間半のロングバトル、戦い続けたFaust.RT

決勝当日、レース開始は午後1時。午前中のフリー走行をこなし、マシンのセッティングも問題なし、昨日同様にピット内はリラックスムードが漂う。金曜、土曜、日曜と日増しに強まる日ざしのせいで、ピット内の熱気は真夏の耐久感覚、波乱も予感させる雰囲気だ。





「予選4位って、上位が1台潰れたら表彰台ですよね」、来客の若い男性が何気なく堀に聞いた。堀は、「そんなこと言ってると自分が潰れるだけ、思わないようにして走るんだ」と返す。確かに、耐久レースでは不測の事態が起こりうる。5月末とはいえ、炎天下の鈴鹿。マシントラブルだけでなく、ドライバーの集中力が一瞬でも切れれば、アクシデントが発生する。カテゴリーの違うマシンが混走するS耐では、追い越しリスクも加わり、危険度はさらに高い。好ポジションをキープしておけば、表彰台も夢ではない。

決勝レースは堀がスタートドライバーで30周、岡本が30周、残りを山野が受け持つ。
スーパー耐久では、1周のフォーメーションラップの後、そのまま止まらずにスタートラインを切るローリングスタートとなるが、もっとも緊張を強いられるのは1周目、とくに2コーナーからS字、逆バンク、ダンロップと続く上りコーナーでは、後ろに付くランエボ勢が得意とするところだけに、彼らを抑えられるかどうかはドライバーの腕だけにかかっている。堀がスーパー耐久でスタートドライバーを務めるのは2度目、スタートの重圧は想像を超えるものがあるはずだ。

13時ジャスト、鈴鹿500kmレース、およそ3時間半のバトルがスタートする。
ペースカーがピットロードに入り、長いストレートに爆音がこだまして、1コーナーにマシンが殺到する。堀はポジションをキープし2コーナー、S字、ダンロップへ。メインスタンド側から見えるのはここまで。後は最終シケインまでは、モニター以外ではバトルを直接見ることはできない。

1周目のストレート、戻ってきたFaust.RTのポルシェは4位。ピット内では歓声が上がる。まずはランエボ勢を押さえた。堀のレースラップは17秒台~18秒台、前を行く3台はワークスのST-1クラス、別次元のスピードで飛ばしていくが、堀から後ろは大混戦だ。ST-2クラスのマシンとはいえ強力、やはり17秒台、18秒台のラップで追いかけてくる。その差はわずか。

昨日のミーティングの効果なのか、堀は落ち着いてレース序盤を乗り切り、スティントの中盤から後半にかけて後続との差を広げ、そのまま30周を走りきった。タイヤが消耗する中で、中盤は19秒前後、後半は20秒前後で確実にラップを刻み、5位以下に10秒以上の貯金を作った。

30周目には予定通りのドライバーチェンジ。燃費のいいST-2、ST-3クラスに比べ早めのピットインだったので、順位こそいったん11位に落ちたものの、交代した岡本は、そこから周回ごとに順位を上げ36周目には7位まで挽回。40周を過ぎる頃には6位へとポジションを上げた。

ダンロップでのスピン、
凍りつくピット

46周目、その岡本のマシンが突然ピット内のモニターに大写しになった。
「ダンロップで横を向いて止まっている」誰かが叫んだ。Faust.RTのポルシェだ。岡本が苦手だと言っていたダンロップ、コース上で真横を向いて止まってしまったのだ。即、再スタートが切れたため、わずか数秒のできごとだったが、コース上での停止は、追突を呼びかねない。幸い、直後に後続車がいなかったため、事なきを得たが、ピット内は一瞬ひんやりとした空気で包まれた。

レースに復帰した岡本は、その後は順調に周回を重ね、60周目ドライバー交代のためにピットに戻ってくる。岡本「見てましたか、見てましたよね~、ダンロップ。実はスプーンの入り口でも1回スピンしたんですよ。スプーンではランサーに強引にブロックされて行き場がなくなったんですけど、ダンロップは正真正銘の単独スピンです!」と、笑顔のご帰還だ。結果オーライを人前でクヨクヨするようなタイプではない岡本。ピット内は笑いに包まれる。

岡本の最終的なポジションは6位だったが、終盤に他車のアクシデントによるセーフティーカー導入により、前を行く4位、5位のマシンとの差がグッと詰まっていた。最終スティントで上位に進出できる可能性が十分残されていた。ドライバーチェンジで交代した、山野に期待がかかった。

Cドライバーの山野は期待通りにラップを重ね、コースインして10周目、トータル70周目には早くも5位に、75周目には4位へとジャンプアップ。予選ポジションまで戻した。ところが4位に上がったその周に、ドライバーの山野から無線が入る。

「3速がない」

実は、山野に交代した時点でマシンはクラッチトラブルを抱えていた。コースイン後、数周で、いよいよクラッチが切れなくなり、ダイレクトにミッションを繋ぐことで凌いでいたのだが、一番使う3速が壊れて入らなくなったのだ。やがて5速もなくなり、ラップタイムも23秒、28秒とみるみる落ちる。それでも残ったギヤをだましながら使い、山野はフィニッシュラインを切る。最終的にはFaust.RT結成以来、最高順位となる総合6位、初のシングル着順を手に入れることとなった。

エピローグ

ゴール後、ドライバー達もメカニック達も久しぶりのハイタッチ&握手。最後に2つ下げた着順は惜しかったが、それも耐久らしい結末。マシンは最後まで十分に頑張ってくれたし、ドライバーも力を出し切っての完走。過去最高の結果はそのご褒美だ。最後に見崎総監督が輪の中で締めた。

「ドライバーがインプルーブ(成長)していて驚いた。これからが楽しみ、次の富士もがんばりましょう」。そう、次はFISCO。さらなる飛躍はあるのか!?

Data

スーパー耐久レースのオフィシャルサイト
http://www.so-net.ne.jp/s-taikyu/

ファウスト・レーシングチームのオフィシャルスポンサー

株式会社BRAINGROUP
http://www.braingroup.jp/

F1 PIT STOP CAFE
http://www.f1pitstopcafe.co.jp/

セインツシンフォニー
http://www.thesaintssinphony.jp/

Back Number

画像

このカテゴリーのインデックス

Page Top


  • Mail News
  • 画像クリックでイメージムービーがSTART

  • 冒険のクロニクル  Presented by BREITLING
  • Award Archive
  • ファウスト魂