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Vol.21
2戦連続ポールも、決勝わずか届かずの2着!

全6戦を戦う2012スーパー耐久シリーズ、第3戦の舞台は宮城県のスポーツランド菅生。第2戦から3週間とレース間隔は詰まっているものの、「優勝」の手ごたえが残る中でチームは好調を維持、レースウィークを迎えた。

GTドライバー千代選手が合流

Faust Racing Team(以下Faust RT)は初戦3位、2戦目優勝と、過去最高のシーズンスタートを決めた。ただ、今回のレースもレギュラードライバーの佐藤が前戦に引き続き欠場となってしまった。レギュラーが欠場の場合はチームに帯同するドライバーコーチの山野が乗っていたのだが、その山野も全日本ジムカーナーとスケジュールが重なり欠場。急遽、スーパーGTに参戦中の千代勝正がドライバーを務めることになった。

千代は、昨年、全日本F3最終戦で逆転チャンピオンを決め、今年からスーパーGTのGT300クラスにGT-R(S ROAD NDDP)で参戦、将来を嘱望される若手レーサーのひとり。これまでにもFaust RTの走行会イベントに数多く参加、レースの応援にも来てくれている。Faust RTのドライバーとして走るのは初めてだが気心知れているメンバーだ。

Faust RTが参戦するカテゴリー/ST-1クラスはシーズン3戦目ということもあり全容も見えてきた。ライバルは#25ポルシェと#3フェアレディZで、三つ巴の戦い。シリーズポイントも最終戦まで競い合うことになるだろう。

予選

トップで快調な滑り出し!

5月20日(日)、開幕戦と同じ1Dayイベントのためスケジュールはタイトだ。舞台となるスポーツランドSUGOは、最終コーナーからメインストレートにある上り10%勾配の急坂が特徴で、アップダウンに富んだテクニカルなサーキット。コース幅が広いとは言えず、オーバーテイクには相当な気を使う。トラフィックにつかまると数秒のタイムロスは覚悟しなければならない。



前日行われた専有走行では、堀が最終コーナーでコースアウト。前後バンパーをウォールにヒットしたが、マシンはフロント&リアバンパーを交換、アライメントを調整する程度の軽微な損傷で、ことなきを得ている。心配された堀の身体も、メディカルチェックを受け、痛みは残るものの問題なしと判断された。

早朝8時45分から行われた予選、Aドライバーを務めたのは堀。Faust RTのピット位置が最終コーナーに近いため、コースインが遅くなる場所。序盤でクリアラップを取るのに苦労するかもしれない。

案の定、クリアラップを取るのに数周かかった堀だが、計測4周目に目標としていた28秒台、1分28秒991を出す。数周はクールダウンラップ、タイヤを温存しながらアタックチャンスをじっと待つ。そしてラストラップとなる9周目に自己ベストの1分28秒958を出し、予選を終えた。この時点でトップの#25ポルシェに2秒1遅れだが、相手はGTドライバーの土屋武士。Bドライバー予選で逆転可能なタイム差だ。

続いて行われたBドライバー予選は、前日の専有走行から上々のタイムを出している千代のアタック。コースイン直後、初周の最終コーナーで飛び出すマシンがあり赤旗も予想されたが、イエローフラッグにとどまり、予選は継続して行われた。千代は計測2周目に早くも27秒台に入れ、3周目には1分26秒431のST-1クラスのベストラップを出す。
千代からは「OKです」の無線。
タイヤの一番おいしい部分を使ったから、それ以上走ってもタイムが出ないという内容だ。レギュレーションでは予選タイヤのワンセットを決勝スタートで使うため、そのまま1周してピットロードにマシンを戻す。プロドライバーとしての仕事ぶりは見事と言うしかない。

ピットではライバルチームの動向を見るが、Aドライバー+Bドライバーの合計タイムでFaust RTが約1秒上回っている。アタック後半で詰まるタイム差ではない。結果、予選合計タイムは、2分55秒389。2位#25ポルシェに約1秒、#3フェアレディZに約2.5秒の差をつけトップを奪取した。2戦連続のポール、同時にシリーズポイントも1ポイント獲得した。

基準タイムをクリアすればOKのCドライバー予選。イージーに流しても問題ないところだが、決勝でスタートドライバーを務める岡本は、その手ごたえをつかみたい。アタック2周目に1分29秒台に入れあっさり基準をクリア、2周ほどクールダウンしたあと、5周目、6周目を自己ベストで連続更新、最終的には1分29秒463を出す。集中力を高めたままのいい状態で、時間を10分残し予選を切り上げた。

予選を終えたそれぞれのドライバーに聞く。
堀「コースに出て4周目まではトラフィックばかりで詰まった状態。クリアだったのは最後の1周だけ。それでも1台ひっかかったから、1分28秒切れる感触はありましたね」

千代「チーム(NDDP)からはいい経験になるからがんばってこいよと言われました。S耐のクルマはスーパーGTのマシンに近いので違和感なく乗れました。決勝が楽しみです」

岡本「決勝に向けていい走りができました。自己ベストは更新できたし、3人の合計タイムも他チームより上。ぶつからない、回らない、飛び出さないでミスなく走れば勝ち抜けでしょうね」

決勝

スタート直後の多重クラッシュでSC導入





決勝レースは3時間と、スーパー耐久シリーズの中ではショートディスタンス。Faust RTのドライブ順はスタートが岡本、2ndに堀、ラスト千代の順で走行は1時間ずつの均等割り。堀から千代はタイヤ交換なしの予定だ。

岡本は一昨年の初戦SUGO以来のスタート担当。その時はマシンの排気系にトラブルがあり後方からのスタートなので、ポールからスタートの今回とは緊張感も違うはず。そのプレッシャーを計り知ることはできないが、その瞬間ひとつもレースの醍醐味なのだろう。スタート進行に入ったコース上、マシンに乗る前はリラックスしている様子だ。

13時35分、ピットスタート1台を除く44台によるフォーメーションラップスタート。コースはドライ、コンディションはグッドだ。ピットからは岡本に「スタートラインまで前を抜かないように」と無線による指示。わかりきったことだが、確認はピット側の欠かせぬ仕事だ。

最終コーナーから急坂を上りストレートへ、シグナルグリーンで加速、一斉に飛び込む1コーナー。
ここで岡本は上手くインラインを取り後続を抑えた。#25ポルシェがアウトから抜きにかかるが、抜かせない。そのまま2コーナー、3コーナー、ヘアピンと逆に差を広げていく。

ところが、万事順調そうに見えた直後、後続車の一団が3コーナーで多重クラッシュを起こした。コース上にパーツが散乱し、セーフティカー(以降SC)が導入されることになった。そして、4周目まで行われたSCランの間に全チームの約3分の1がピットストップを行いドライバー交代を済ませた。

このレースでは最低2回のピットストップ&ドライバー交代が義務付けられているため、SCランの間に1回分を消化してしまおうという作戦だ。一時的に順位を落としても1回分のピットストップ時間が稼げることになる。GT3クラス、ST-1クラスで動いたのは#3のフェアレディZのみ。予選タイムが振るわなかったことも、序盤から勝負に出た一因かもしれない。Faust RTはステイ、ドライバー交代なしだ。

SCランの間もピットから「タイヤを冷やさないように」と無線での確認が岡本へ。
SCランの間は退屈なばかりか、集中力を切らしやすい。千代からは「スタートきれいでしたね」と、お褒めのメッセージで激励。

コースがクリアとなったレース再会後、1分30~31秒台のレースラップをコンスタントに刻む岡本。直後のポジションにいるのはライバルの1台、#25ポルシェ。岡本は、その差を周ごとに0.5~2秒ずつ広げ、20周目には約20秒以上の貯金を作る。

ここまでは順調だが、さらに後ろにいる#3の動向は気がかりだ。SCランのピットインで順位を落としているが、タイム差は後方約35秒。ピットイン回数を考えれば実質#3がトップとなる。

レース後半、堀と千代での逆転なるか?

36周目、ルーティンのドライバー交代でピットイン。岡本から堀にドライバーチェンジする。これでピット回数は#3のフェアレディZと同じく1回だ。#3を追い上げるスティントが始まる。

マシンから降りてきた岡本は、納得のいく走りができたという表情。ピットから「ご苦労さま」の声がかかる。残り2時間、レースはまだこれからと誰もが思っている。

バトンを受けた堀は、アウトラップの次周こそ34秒台だったが、その翌周から30秒~31秒台と一気にレースラップに入る。#3との差は約80秒。勝つためには堀と千代で80秒差を逆転しなければならない。46周目、堀のスティントに入りわずか10周で、#3との差を65秒と詰めた。

58周目、#3フェアレディZが最後のピットイン。ドライバー交代と給油、タイヤ交換を行う。一時的に#9 Faust RT BMWはトップに立つが、コースに戻った#3が後方10秒に迫る。タイヤのフレッシュな#3は、堀を追い上げにかかるものの、その差4秒を保ったまま堀は千代へとつないでいく。

71周目、Faust RTも最後のドライバーチェンジ+給油。予定通りタイヤ交換はなし。ここでピットタイムを少しでも稼ぐ。ピットストップ時間わずか38秒で千代はコースに飛び出す。

ピットインの間にトップに立った#3との差は約60秒。レース残り時間は1時間で35~6周の攻防だ。毎周2秒ずつ詰めれば届くが、終盤の荒れた路面とトラフィック、タイヤ差を考えると計算は成り立たない。しばらく様子を見るしかない。

千代は1分28~29秒台というハイラップで#3を追い上げる。堀も岡本も掲示モニターを見上げての応援だ。
83周目-51秒差。
88周目-41秒差。
千代はこの日のST-1クラス最速ラップ1分28秒353を叩きだす。

90周目、前を行く#3フェアレディZがラップを29秒台に上げる。ドライバーはスーパーGTを走る峰尾。ここから差が詰まらなくなった。それまで毎周2秒詰めていたのが、1秒しか詰まらなくなった。これまでスーパー耐久ではスタート担当の峰尾が、今日に限って最終スティント。展開利は#3だ。

95周目-32秒差、残りは15分。
105周目-25秒差、さらに差が詰まらなくなってきた。
そして116周目、チェッカーを先に切ったのは#3
…その差わずか20数秒。
惜しくも届かずの2着、SCランでのマージンでキッチリ逃げ切られた。

From Faust A.G. Channel on [YouTube]

Faust RTの走りをムービーで!(ST-1クラス 9号車 BMW Z4)
★【YouTube:FaustA.G.チャンネル】でもご覧いただけます(スマートフォンの方 はこちらがオススメ)

次戦への期待膨らむ安定したレース内容



表彰台では、お互いの健闘を称えてのシャンパンシャワー。レースが終わってしまえばナイスファイトのライバルへの敬意は当然のこと。Faust RTの予選1位/決勝2位の結果はベストではないが、3時間の決勝レースをトラブルなく順調に完走できた内容は満足できるもの。ポイントもキッチリ取れた。レース後のドライバーのコメントにもそれが伺える。

スタートドライバーの重責を果たした岡本
「クルマは壊れず、ミスもなく、今の実力どおりに3時間戦えたので悔しさはないですね。金曜の練習走行から決勝まで1回もコースアウトしないのはFaust RTで走って初めてでした。走行中は余裕があったし、トラフィックの中、リスクを取らずにタイムをまとめられてよかった。作戦としてライバルチームに運があったので2位は仕方ないですね」

前日のクラッシュを跳ねのけた堀
「昨日はウォールに激突して痛かった~(身体が)。マシンが最小限のダメージだったことはラッキーだったけど人間の方がね…。今日は安全に、タイヤマネジメントしながら走ってました。スパッスパッと攻めていければね、その点は気合不足でした。チームとしてはスムーズな決勝レースで満足しています」

ピンチでの出走もプロの実力を見せた千代
「前の#3をプッシュしたけど時間が少し足りませんでした。SCが入らなければ勝てるレースでしたね。その点は悔しいけど、走りは満足のいくものでした。Faust RTのレースは何回も見ているけど、レースごとによくなっていますね、これからが楽しみです。参加できてよかったです」

ドライバーのレーススキルもマインドもが上がっている2012年シーズン。後半戦は西日本エリアで行われる岡山、鈴鹿、オートポリスの3戦だ。次戦の岡山国際サーキットは、過去、天候不順やマシントラブルでドラマチックな展開になることが多い舞台。波乱を呼ぶ展開はあるのか?優勝の行方は?いずれにしても目の離せないレースになるだろう。

Data

SUGO International Racing Course
2012.05.20/Course Length:3,704256Km
Weather:Sunny/Course:Dry
Faust Racing BMW Z4M COUPE
Driver岡本 武之/堀 主知ロバート/千代 勝正
3h00’55.976 114LAP
ST-1クラス2位

スーパー耐久シリーズ公式サイト

http://supertaikyu.com/

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