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地球上“最極寒の旅”
冬季南極大陸横断が始動する!

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日本が暖かい季節の訪れに心を躍らせる春分の頃、南極大陸では、もっとも寒さの厳しい季節が幕開ける。南極の冬季が一体どれほどのものなのか。ノルウェー人探検家ロアール・アムンセン隊と英国人探検家ロバート・スコット隊が生死をかけた壮絶な南極点到達レースを繰り広げてから100年が過ぎたものの、いまだかつて冬の南極大陸を横断した者がいないとうい事実が、その苛烈さを如実に物語っている。
しかし今年、南極の歴史に名を刻む、前人未到の旅「The Coldest Journey」がいよいよ動き出す。出発前にチームを襲った最初の試練とともに、その概要をお伝えしたい。

(C)The Coldest Journey
ラノフ・ファインズ卿(Sir Ranulph Fiennes)。(C)The Coldest Journey
隊員や物資などを乗せた荷台を列車のようにつないだ「アイス・トレイン」で進む。(C)The Coldest Journey
南極大陸の横断ルート。(C)The Coldest Journey

完璧なほどの暗闇、
氷点下90度の世界

南極の冬季は3月から9月。4月から8月の間、南極点においては太陽が昇ることさえなく、月の光を除けば一日が完璧なほどの暗闇に包まれる日も多いという。氷点下70度に見舞われることも珍しくなく、最低で氷点下90度に近い数値が記録されたこともあるほどの超極寒の地だ。ほんのわずかの間でも外気に肌をさらせば重大な凍傷にかかる恐れがあるばかりか、寒気を直に吸い込むだけでも、肺に傷害を与える可能性さえ指摘されている。
このような気候状態にあっては、たとえチームが危険な状況にあっても早急な援助は望めず、ひとたび出発すればあとは自らの力で対処していくしか手だてはないともいわれている。
そんな地球上最極寒の地に挑むのが、“いま最も偉大な冒険家”と称えられる英冒険家のラノフ・ファインズ卿(Sir Ranulph Fiennes)率いる6人のアイス・チームだ。

1日約8時間、35キロ
6ヵ月をかけてチームは行く

彼らが挑む「The Coldest Journey」と名付けられたこの旅の行程を見てみよう。
来たる3月21日に南アフリカからさらに南方に位置する南極大陸のクラウン・ベイを出発し、一路南極点を目指す。
朝(といっても太陽が天高く昇って一帯を明るく照らすわけではないのだが)6時半にその日の天気の状態を確認、当日のプランを打ち合わせたのち、出発。スキーをはいた隊員が先頭に立ち、クレバス(氷河の裂け目)や地形情報を感知できるレーダーを引いて先導し、その後を”アイス・トレイン”が続く。アイス・トレインとは物資や隊員などを乗せた荷台を列車のようにつないだもので、2台のトラクターが、生活スペースとなるコンテナや、研究資材を搭載したコンテナ、食料、燃料などを牽引し、大陸を進んでいく。1日およそ8時間、平均35キロ。大きなクレバスが感知されればルート変更を余儀なくされ、悪天候に見舞われれば、じっと待機することになる。予備日なども含め、計画の通りに進めば、6月中旬には南極点に到達していることになる。その後、ニュージーランドの南方に位置する南極大陸マクマード海峡(McMurdo Sound)のスコット基地へとルートを取り、到着は9月21日頃と予定されている。南極の冬と真正面から対峙する、長い旅になるというわけだ。

人類初の挑戦という冒険の一方で、科学、教育を目的とした一面も担っている。地球温暖化がもたらす南極の氷冠への影響を調べる研究材料を収集、冬季における氷の厚さの測定、極寒の地でも生息可能なバクテリアの生態を知るためのサンプル採取など。初の冬季南極大陸横断となることから、彼らが現地で得る情報の数々は貴重で、科学教育分野への貢献が大いに期待されている。またチャリティの目的も掲げられ、世界中の失明者へのサポートを行うSeeing in Believingへの1000万ドルを目標とした募金活動も同時に行われる。

突然訪れた最初の試練
チームの柱、ファインズ卿が離脱

企画の立ち上げから綿密な計画と実行にいたるまで、チームの柱となるのが、英冒険家のラノフ・ファインズ卿だ。1944年に生まれた彼は、かつて英国陸軍に所属した経歴の持ち主で、北極、南極間を帆船で航海したほか、冒険家で医師のマイク・ストロード氏とともに徒歩による南極大陸横断に成功。2009年には世界最高峰エベレストに65歳で登頂するなど多くの冒険に挑んでいる。
世界が注目する新たな冒険への出発を1ヵ月後に控えた2月下旬。新しい装備の点検をしようとひとりでトレーニングを行っていた際、突然のアクシデントがファインズ卿を襲った。隊の先頭に立ち、スキーでの横断を予定していた氏は、緩くなったスキーのビンディングを調整しようとしたがうまくいかず、グローブを外して調整。20分にも満たない間だったというが、氷点下30度の冷たい外気にさらされた手は凍傷にかかり、これから予定されている旅が望めなくなってしまったのだ。
緊急帰国後の記者会見で「手袋を外すべきじゃないことぐらいわかっていただろう?って人々はいうだろうね。でも、ああしなければどこへも行けないような状況だったんだ」と語ったファインズ卿。自らも「取り返しのつかないことを後悔する性格ではない」と語るように、悔やんでも仕方がないことを一番わかっているのは自分自身だ。第一線に立って旅へと出ることは適わなくなってしまったが、南極横断に挑む仲間への支援を誓うと共に「(この旅の目的のひとつである)チャリティ活動に全精力を注ぎ込むつもりだ」と決意を語った。その表情には、現実を受け入れ、自分のすべきことへと進んでゆく真の冒険者たるものの気高さが浮かんでいた。悔しい気持ちを胸に、「この計画はとても危険で困難なものだが、もし誰かが成し遂げることができるとするならば、それはいまこのとき彼らにほかならない」と希望を託した。
これまでチームを率いてきたリーダーの突然の離脱は、他のメンバーに動揺を与えたに違いない。しかし残されたメンバーの冒険への意思は強く、5人で計画を実行することを決意。チームのひとりで医師のロブ・ランバート氏は公式ウェブサイトで次のように語っている。「彼がこのような形で去ることはとても残念だ。これは今後起こりうる大きな試練のひとつとなるだろう。しかし僕らは強く、確固たる決意のもと進んでいく」
さぁ前人未到の旅“The Coldest Journey”が、いよいよ動き出す。しかと見届けたい!

The Coldest Journey のチームメンバー

Brian Newham
Ian Prickett
Dr Rob Lambert
Spencer Smirl
Richmond Dykes

Data

Line up

ADVENTURE

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CHALLENGE

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CONTRIBUTION

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From NATIONAL GEOGRAPHIC

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いま、世界一周の途中。

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