画像 Who is mephisto

INTERVIEW with FAUST
Toshihiro Takeda
Katsuhiko Ochiai
Kouji Miyagawa

世代を超えて精神を結びつける絆、クラシックカー

小豆島で行われた初めてのクラシックカー・ラリー、
「チェントアンニ・クラシカ」に参戦したファウストたち。
ひとりの人生において、100年は永遠にも等しいが
「100年もの時を紡ぎ続けたい」という意味を持つこのレースで
それぞれの心に刻まれたのは、どんな思いだったのか――。

Toshihiro Takeda

クラシックカーは天の巡り合わせ

Mephisto(以下M)この2日間、天候にも恵まれ絶好のコンディションでしたが、小豆島をくまなく走り終えていかがでしたか?

武田:沿道から手を振ってくれる一般の方々も多くて嬉しかったです。私たちにこの機会を与えてくださった地元の皆さんに感謝したいですね。単に競技の場にしてしまっては自分たちのエゴになりますから、やはりイベントの主旨にご賛同いただき、小豆島の地に迎え入れていただくことが大切なこと。参加者の我々はオジャマしているという気持ちがなくてはこの種のイベントは成立しないと思います。



前オーナーご夫妻の思い出が詰まった1949年式O.S.C.A MT4 1100 Siluroを駆り、ヒルクライムでコーナーを攻める武田さん。

M:武田さんご夫妻が現在お乗りになっている1949年式O.S.C.Aも希少な車両ですが、武田さんがクラシックカーに興味をもたれたきっかけは、どんなものだったのでしょう。

武田:ちょうど2年ほど前でしょうか、2008年にこの車両を譲っていただきました。前オーナーご夫妻は、ミッレ・ミリアにも参加されるほどクラシックカーがお好きで、また、国内ラリーにもつねにお二人で参加し楽しまれている方たちでした。それがご不幸なことに奥様が亡くなられて、その後はガレージに車両を納めたままクラシックカー・ラリーに参加されることもなくなってしまっていた。しかし「クルマは走っている姿が自然」というお気持ちもあり、「ご夫婦で大事にしてくれること」を条件にお譲りいただけたんです。これは私たち二人にとって、大変光栄なことですし、このクルマは私たちの宝物なんです。

フェラーリは「男」のロマン
――とは限らない

M:それは素敵なエピソードですね! クルマというと男の趣味と思いがちですが、奥様も初めからクラシックカーがお好きだったのでしょうか?

康子:とんでもない! 主人はおじい様の影響もあってクルマ好きですが、私はまったく興味がありませんでした。でも、主人は“いつかはフェラーリ”に乗りたいと考えていたようですよ(笑)。

M:で、買ってしまったんですね。

康子:子育ても一区切りついていた時期ですし、仕事もがんばっていましたから。それでも、私は贅沢品だと言っていましたから、主人は中古の328で我慢したようです(笑)。

M:現実として受け入れてからはいかがですか?

康子:エンジンの音はやかましいし、ご近所迷惑も気になりますし、フェラーリに乗ってる人って遊び人のイメージがあるし。最初はもう恥ずかしくて、恥ずかしくて……(笑)。

武田:それから360スパイダーに乗り換えたんですが、F1マチック(フェラーリのセミオートマ)だし、これならAT感覚だからふたりで乗れるよと……。

康子:これがきっかけで、お仲間とF1を観戦しに出かけたり、他のフェラーリ・オーナーさんたちと触れ合う機会が増えて、考え方が変わったんです。私のなかに漠然と「チャラい」イメージがあったのは確かですが、皆さん仕事面でも努力されている方が多く、エネルギーというか、オーラを感じるんですね。ですから、イベントなどを通じて皆さんとお会いすると“私もがんばろう! ”と影響されることが多くなりました。

M:自分で運転するようになると、またフェラーリ観も変わりますね。

康子:地を這うような低さ、生き物のようなエンジンの音をともなって走る感覚はもう快感ですね。血が逆流するというか、鳥肌が立つような……。それから考え方が180度変わりました(笑)。

クラシックカーは未来を語る

M:単に一台のクルマというよりも、フェラーリのレースに賭けるDNAや、情熱のカタマリのようなクルマ作りは、ドライバーに直接訴えるものがあるんでしょうね。今回参加したクラシックカーは、その多くがレースを戦うために生まれたようなものばかり。当時の先端技術でできていますから、モノ作りにかけるエンジニアの魂がこもっているといえるでしょうね。

武田:今ではミッレ・ミリアに出場するのが夢なんです。そのために見学にも行きました。その時にスターリング・モスさんにもお会いすることができて、奥様ともお話しすることができました。とても気さくなご夫婦で素晴らしい体験でした。子供たちも賛成してくれていますので、この夢を是非とも家族で実現したいと思います。

M:ミッレ・ミリアには、街も人々も、歴史ある自動車文化を大切にしようという空気と背景がありますからね。ご家族の協力もあって夢を現実に変える事ができれば、前オーナーご夫妻に対しても素敵な恩返しにもなりますね。

クルマをかたどったバックには、再開後のミッレ・ミリア会場でお会いしたスターリング・モスご夫妻のサインが入る。
見事、優勝に輝いた武田夫妻。2日目のヒルクライムでは設定タイムから1秒以内にタイムをまとめたのが功を奏した。このトロフィーは次回大会までの1年間授与される。

康子:クラシックカーの存在意義感というのでしょうか、今回のタルガ小豆島もひとつのきっかけとして、何か地元のお役にたてればいいなと思います。私たちは走らせていただいているわけですから。

武田:クラシックカーには、未来を託す子どもたちのハートに語りかけるパワーがあると思います。こうした活動を通じて触れ合い、輪が広がることで、何かが生まれることを希望しています。

Katsuhiko Ochiai

ふたりで楽しむクラシックカーの奥行き

M:落合さんはこの1年間で5000kmも走行距離が延びているそうですが、これまでのイベントと比較していかがでしたか?

落合:これまで出場したラリーは競技性が高いイベントでしたが、今回は純粋に楽しめました。1泊2日のスケジュールで、山と海の両方がステージになっていたことで、コースは変化に富んでいましたし、スケジュールにも工夫がありました。僕は関西圏に住んでいますが、じつは小豆島は初めてなんです。リゾート地と知っていても、近場ですからね。実際に訪ねてみてホントにここは良かったです。

M:今回エントリーしたクラシックカーのなかで、唯一、自走で現地入りしたのが落合さんの車とのことですが、ご自宅を出発した時点ですでにラリーが始まっているようなものですね。

落合:小豆島はまだ近いほうですよ(笑)。移動もまた楽しみのひとつです。

M:助手席は疲れたりしませんか?

佐知子:乗り心地はあまり気になりません。ラリー中は結構忙しく仕事をしています(笑)。

M:ラリーのどんなところが楽しみですか?

佐知子:そのイベント内容や気候に合わせて、今回はなにを着て行こうかなとか、ふたりでどう揃えようとか、ファッション・コーディネイトですね。

M:もしも「ベスト・ドレッサー賞」があったら、間違いなくお二人が受賞ですね。重ね着されているはずなのに着膨れすることもなく、じつにスマートですね。

落合:エアコンなんてありませんから、女性は特に大変ですよ。今日は4枚重ねだっけ?

佐知子:ええ。でも、ラリーはコマ図でルートを確認し、また時間の計算などもありますから、意外と集中していて助手席も楽しいですよ。

落合:これまではサーキット走行などもしましたが、ドライバーの僕は走っているから楽しいですけど、ピットで待たせるのは気が引ける。でも、クラシックカー・ラリーならふたりで楽しめる。そこが魅力ですね。

M:なるほど。ひとりでは走れませんからね。

落合:クルマを走らせる楽しみ方が違うというか、クルマを通して人間が楽しむことができる。

M:来年もタルガ小豆島に参加したいと思われましたか?

落合:続けていければいいなと思います。100年経ったら僕はもういないと思いますけど、このクルマは残るんでしょうね(笑)。

落合さんの愛車、1948年式ROSELLI 1100 SPORT。2009年はラリー・ニッポンやラ・フェスタ・ミッレ・ミリアにも参加した。
アウターはお揃いでもパンツはそれぞれに。ファッションもクラシックラリーを楽しむポイントと語る落合&平井佐知子さん。

Kouji Miyagawa

本来の姿で走らせることの喜び

M:今回お話をうかがった方のなかでは、宮川さんが唯一のスーパーカー・クラスへのエントリーでしたが、非常に注目度が高かったですね。日本に2台しかないという希少性はクラシックカー・クラスに引けを取らない。

宮川:今まではクルマを所有するだけで満足していたんですよ。でも、友人に「飾っておくだけならミニカーでいいじゃん」なんて言われて。それがきっかけというワケでもないのですが、先月にサーキット壮行会(富士スピードウェイ)へのお声掛けがあり、参加してみることにしたんですね。それで、初めてヘルメットを買ったりして。まさか、自分がヘルメットを被ってクルマを運転することになるとは思ってもみませんでした(笑)。

希少なBUGATTIの2ショット。左はグランプリシーンを席巻した歴史ある1929年式Type35C。右は宮川さんの愛車、2008年式Veyron。
小豆島のギャラリーの声援に感動したという宮川夫妻。タイトなコーナーではそのボディサイズがややハンデだが、加速スピードは圧巻の一言。

M:それは新鮮な感覚ですね。

宮川:で、仕事が終わって自宅に戻ると、妻がヘルメットをかぶってテレビを見ているんですよ。「お前、何してるん? 」と聞くと……。

有利:実際にヘルメットを被ってみると、視界が極端に狭いですよね。なんかコワイから、いまのうちに慣れておこうと思って(笑)。

宮川:それで僕も被ってみると、なるほどと。コレは別世界だぞと、納得しました。

M:レースへの真摯な思いを感じます(笑)。

宮川:先月の走行会当日は今回のゲストでもあるプロレーサーの飯田彰さんに指導していただいたのですが、F40に乗って、1コーナーで2回転スピンを体験するなど、いい経験をさせてもらいました。

M:クルマ観が変わったんじゃないですか?

宮川:この体験を通じて、初めて僕のなかで、「走る」ことと、「楽しむ」が、「イコール」で結ばれたんです。走ることで人の輪に加わり、触れ合うことで学ぶことも多く、人生についてもより深く考えるようになりました。

M:そういえば、落合さんとも親しくお話しされていましたね。

宮川:落合さんは僕のファッションの先生です!(笑) ホントにセンスがいいから、いつもお会いすると、どこのブランドだとか、どこのお店? とか聞いちゃいます。マネしないから教えてって!

M:このタルガ小豆島も、その輪の延長上にあるんですね。

有利:街の皆さんも、沿道から手を振ってくださる方が多く、とても感動しました。

宮川:今回のラリーを通じて、何か共有できるものがあったらいいなと思います。初めての方とも気さくにお話しできましたので、また新しい体験をさせていただきました。

 

Faust Profile

画像

武田年弘(たけだ としひろ)
2007年に富士スピードウェイで開催されたル・マン クラシックにはフェラーリ330GT2+2でエントリー。クラス5位を獲得する実力者。現在は縁あって入手した1949年式O.S.C.A MT4 1100 Siluroをガレージに加え、クラシックカー・ラリーに参加している。ビジネス同様にご夫婦二人三脚、康子夫人とミッレ・ミリア出場を計画している。

Faust Profile

画像

落合克彦(おちあい かつひこ)
大阪府・兵庫県下に展開するスーパーマーケットKOHYOの代表。生鮮食料品は産地直送仕入れをおこなうなど、鮮度と付加価値の高い品揃えが店舗の魅力となっている。クルマそのものの価値を十分に理解しながらも、クルマを通してライフスタイルを追求するセンスあふれる人物。希少なクラシックカーでもイベント会場とメンテナンスに抜かりはない。

Faust Profile

画像

宮川耕治(みやがわ こうじ)
空間デザイナー。商業店舗・ビル、個人住宅のデザインを主に手がけるほか、トータルプロデュースも行う。サーキット走行をきっかけにクルマに対する価値観が一転し、サーキット走行をきっかけに、アクティブにドライビングを楽しむスポーツ派へとかわった。クリエイティブな仕事柄もあり、柔軟な思考回路の持ち主。初参加となった今回のラリー・イベントにも刺激を受けたようで、第2回大会となる2011年が楽しみなエントラント。

  • ◎「自分もチェント アンニ クラシカ タルガ 小豆島に挑戦したい!」という挑戦者へ画像

Who is Mephisto ---メフィストとは

人生のすべてを知ろうとした、賢老人にして愚かな永遠の青年「ファウスト」(作:ゲーテ)。この物語でメフィストとはファウストを誘惑し、すべての望みを叶えようとする悪魔。当クラブ「Faust Adventurers' Guild」においては、Faustの夢と冒険の物語をサポートする案内人であり、彼らの変化や心の動きに寄り添う人物。時に頼れる執事、時に気の置けない友人のような存在は、『バットマン』におけるアルフレッド(マイケル・ケイン)、『ルパン三世』における不二子&次元&五右衛門トリオのようなものか? 今後、Mephistoは各クエストの終わりにFaustの皆さまの心を探りに参ります。どうぞよろしく。

Page Top

Back Number

Clear

Clearインデックス

now on

Now onインデックス

Page Top


  • Mail News
  • 画像クリックでイメージムービーがSTART

  • 冒険のクロニクル  Presented by BREITLING
  • Award Archive
  • ファウスト魂