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INTERVIEW with FAUST Taiyo Akagi
Faustが描くポーカーの新世界

WSOP会場とは目の鼻の先にある、リオ自慢のプールエリアに赤木太陽はいた。
照りつける太陽の下には真っ白な砂浜が広がっている。
この期間はどこもかしこも、ポーカープレイヤーだらけだ。
彼らは赤木の姿を見るや次々と声をかけてきた。
「調子はどうだい?」
これは社交辞令の挨拶ではない。彼らが聞いてくるのはあくまで「ポーカーの調子はどうだい?」という意味だ。
「No Good…But Fine Today!」
赤木はある方向を指さしながら笑顔で答えた。その先にはブロンド美女数人が水遊びしている光景があった。
激戦を終えた翌日のようやく訪れた休息のひと時、Faustポーカープロジェクトのリーダーは今回の挑戦をゆっくりと振り返ってくれた。

表情が読みづらい日本人の強み

Mephisto(以下M) いかがでしたか、今回のWSOP挑戦は?

 

Faust(以下F) トーナメント結果に関していえば、ひじょうに不満足です。負けるつもりで海外トーナメントには参戦していないですし、常に勝つ気満々で臨んでいますからね。トーナメントというのは長丁場になるので、どれだけ我慢強く粘れるかというのが基本。そのためにもまず確率論をベースにした戦術を徹底しないといけないんですが、それだけで勝てるほどポーカーは甘くないわけで(苦笑)。

 

M 3人の真剣な表情が印象的でした。

 



F ポーカーは欧米では“スキルスポーツ”と呼ばれることもあるくらいで、大会中はずっと頭脳をフル回転させていますからね。どうしても険しい顔になってしまいます。ポーカーって意外とハードで、トーナメントで戦っていると一日で体重も2~3キロが落ちるくらい体力も消耗するんですよ。とくにボクはもう年齢が年齢なんで、体力が落ちてくるとどうしても粘りがなくなってしまう。運だけでも勝てない。戦術だけでも勝てない。体調管理も求められるのがポーカーのトーナメントなんですよね。

M 会場には世界各国の国旗が飾られ、メディアも多く集まっていて、いかにもワールドシリーズらしい華やかな雰囲気でしたね。いろいろな国籍のプレイヤーが参戦していて驚きました。

F ヨーロッパやアメリカはいうに及ばないですけど、いまは世界じゅうでポーカーがブームになっていますから。アジアでも韓国、フィリピン、ベトナムあたりでは相当盛んです。日本はまだまだ競技人口は少ないですけど、プレイヤーのレベルはそんなに劣っていません。こっちの連中はよく言ってきますよ。「お前ら、日本人はみんなポーカーフェイスだからやりにくいなあ」って。

M ポーカーは日本人に向いているかもしれませんね。

F 向いていると思いますよ。ルールは簡単だし、麻雀に近い部分もあるので覚えやすいでしょうし。日本国内では金銭を賭けないかたちの、アミューズメントとしてのポーカー大会も盛り上がってきています。

M これまで参戦されてきたアジアのトーナメントとはどこが違いましたか?

F 昨年は韓国やフィリピン、マカオ、オーストラリアの大きなトーナメントに参加してきたんですが、アジア圏で開催される大会って、こんなにお祭りっぽい雰囲気じゃないんですよね。アジアだと、参戦しているのは生きるか死ぬかの覚悟でポーカーにしているような連中ばかり。ポーカープレイヤーというよりは、“ギャンブラー”という感じで、会場はもっと殺伐としています。それに比べると、WSOPは健全ですよね。ESPNの中継も入っているし、人気プロが会場をうろうろしていて、気軽にサインに応じていたりする。それにポーカーにとことん集中できるのが嬉しい。アジアはなにかと誘惑が多いですからね(笑)。

M WSOPには今後も挑んでいくつもりですか?

F これは毎年の恒例にしたいですね。この時期のベガスって蒸し暑いんですけど、その熱気がかえって心地いい。

 

弱いやつは徹底的にカモにされるだけ

M ポーカーの魅力はどんなところにあるんでしょうか?

 

F うーん、これは一言では難しいですね(苦笑)。ただし、間違いなく人生を多面的に楽しめるようになるツールのひとつだと断言できる。ブラフやスロウプレイを織り交ぜたポーカーの駆け引きは投資の理論にもつながるし、ビジネスの場での商談にも役立つ。そして、ポーカープレイヤーの多くは恋愛上手でもあるんですよ。

 


M ポーカーは恋愛にも通じると?

F 同じですよね。押しても駄目なら引いてみな、という部分なんて(笑)。

M なるほど。

F それにポーカーって、かなり効果的なコミュニケーションツールなんですよ。日本人だろうが外国人だろうがポーカーテーブルを囲んでしまえば、すぐに誰ともでも仲良くなれてしまう。日本的な感覚でいえば、ゴルフや麻雀、カラオケにひじょうに近い。これが世界各国、共通ルールで普及しているんだから想像してみてください。ポーカーという共通の趣味を持つだけで、ポーカープレイヤー同士には積もる話が山ほどあるわけで。ゴルフもそうじゃないですか。スイングがどうとか、グリップの位置がどうとか、ウッズの最近の成績がどうとかって。

M オバマ大統領もポーカーが相当強いらしいですね。

F ポーカープレイヤーは優秀な人間が多いので気が抜けませんよ。弁護士とか数学者とか金融関係者とかね。でも、ポーカープレイヤーには肩書きや年収なんて関係ない。強いやつは絶対的に尊敬されるし、弱いやつは徹底的にカモにされるだけで。ポーカーには有名な諺があるんですよ。「周囲を見渡して、カモがいなかったら、自分がカモになっている」って。隙あらばすぐに食いものにされてしまうのがポーカーの世界。ビジネスの世界にも通じるものがありますよね。まあ、そうはいっても、テーブルから席を外せば、みんなナイスガイですけど。

カルチャーとしてのポーカーに興じたい

M WSOP会場で感じたんですが、ポーカープレイヤーはフレンドリーなタイプが多いようですね。

 

F それはあるかもしれない。みんな話好きですよね。口を開けば、すぐにポーカー話が始まりますからね。でも、そんなコミュニケーションを通じて世界じゅうに友達ができるんです。これは、ラスベガスだけに当てはまる話じゃありません。世界のどんな国でも、ポーカールームさえあればどこでも現地の人たちと濃密なコミュニケーションが交わせるようになる。彼らが普段なにを考え、どんなものを食べて、どんなことに興味を持っているのかがわかる。ボクにとってポーカーは異文化に触れるゲートウェイになっているんです。

 

M 競技としての面白さというよりも、ポーカーというカルチャーに魅かれているようですね。

 

F 競技としてのポーカーだって相当面白いですよ。これほど自分の向上心を刺激してくれる趣味はないかもしれない。なにせ、大金がかかっているわけですから、いやがおうにも強くなろうと努力しますしね(笑)。海外で発行されている戦術書を翻訳して勉強したり、メンタルの部分を鍛練したりとか。

 

M ポーカーで勝つためにはなにが必要なんでしょうか?

 

F 基本的な確率論は頭に入っていて当然。相手の持っているハンドを見極めるリーディング能力も必要。あとはなにより強い心ですね。大胆にブラフを仕掛けられる度胸、相手の攻撃にひるまない心、自分に負けない強い心がいちばん重要だと思います。

 

M 今後の予定について教えてください。

 

F 海外のトーナメントは参戦は続けていく予定で、次は11月のセブ島、12月のオーストラリアの大会に参戦を予定しています。ボクは世界を旅するのが好きなんですが、いつもポーカーありき、の旅になってしまいます。現地ではポーカー以外の予定はいっさい入れないので、いろんな国を回っている割には、ポーカールーム以外の場所を知らないんですけど(苦笑)。

M 今回のベガス旅行も、ポーカー以外の予定は入れてないですよね(笑)。

F そうなんですよ。ポーカーしているとき以外は、こうしてプールサイドでのんびりするくらい。あとは、現地で知り合ったポーカープレイヤーたちと夜の街に繰り出すと(笑)。

M 今後はFaustポーカープロジェクトもありますね。

F これはぜひ本格的に始動したいですね。たとえばFaustで日本国内予選を開いて、日本代表を選出して海外へ送りだすような活動をしたりとか、海外の有名プロを招いて交流戦をしてもいい。そして近い将来、Faustからワールドシリーズのチャンピオンが出せたら最高じゃないですか。興味あるFaustにいたら、ぜひ参加してほしいですね。

 

 

  • ◎「世界に挑む寡黙なサムライたち」STORY[前編]はコチラ
  • ◎「世界に挑む寡黙なサムライたち」STORY[後編]はコチラ

 

 

Faust Profile

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赤木太陽(あかぎたいよう)

1969年2月20日、東京生まれ。エディター、プランナー。広告代理店の勤務を経て、2001年に株式会社マッシュルーム(http://mashroom.jp/)を設立。編集責任者として創刊、発刊に関わった出版物は約80点。テレビ番組の構成、漫画原作等、関わるエンターテインメントは約40種類に及ぶ。現在、飲食チェーン企業、格闘技団体、広告代理店、イベント制作会社、web制作会社など、6つの企業の顧問、社外取締役を兼任。主なポーカー戦績は2008 APTマカオ大会11位入賞、2008 HEAT CHANPIONSHIP1優勝、2008 HEAT CHANPIONSHIP8優勝など。現在、世界各国でのポーカー紀行を『CASINO JAPAN』(プリンツ21)にて連載中。


取材協力/WSOP公式スポンサー「EVEREST POKER」

  • ◎「自分もラスベガスでWSOPに挑みたい!」という冒険者へ画像

Who is Mephisto ---メフィストとは

人生のすべてを知ろうとした、賢老人にして愚かな永遠の青年「ファウスト」(作:ゲーテ)。この物語でメフィストとはファウストを誘惑し、すべての望みを叶えようとする悪魔。当クラブ「Faust Adventurers' Guild」においては、Faustの夢と冒険の物語をサポートする案内人であり、彼らの変化や心の動きに寄り添う人物。時に頼れる執事、時に気の置けない友人のような存在は、『バットマン』におけるアルフレッド(マイケル・ケイン)、『ルパン三世』における不二子&次元&五右衛門トリオのようなものか? 今後、Mephistoは各クエストの終わりにFaustの皆さまの心を探りに参ります。どうぞよろしく。

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