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Vol.7
あとは頂上に立つだけだ!
栗城史多、“最後”のエベレスト挑戦へ

単独・無酸素で8000m級の山々を攻め続ける登山家、栗城史多。独りで山を登るその手には必ずムービーカメラがあり、限界に挑む自身の映像を発信することで多くの人々を勇気づけてきた。今回、栗城は、これまで叶わなかったエベレスト(標高8848m)に再挑戦するにあたり、「(このような大規模なプロジェクトとしての登山は)今回で最後になると思う」と話した。「冒険の共有」という志を掲げ、レンズの向こうの人々を励ますために山を登り続けてきた栗城。彼に何が起きたのか。そして、4度目となる今回の新たな試みとは。

地上で登る高い壁
そして、エベレストはいつも魔物だった



西稜ルートからのアタックは難しいといわれている。栗城は「技術的にはそんなに問題ないと思います。天候と高所順応が一番の課題です」と話す。

「死が近いと感じた」。8月24日。ネパールへの出発を2日後に控えた暑い朝、都内で記者会見した栗城は、今春のシシャパンマ(8027m)南西壁登山を振り返ってそう話した。6500m地点で滑落してクレバスに落ちたのである。「夜中の1時半でした。登頂を断念し下山を決めた6分後に、気付いたら体が壁から離れていて、傾斜を15m、さらに垂直に20m滑落しました」。運よくクレバスの途中で引っかかり、死ぬ思いで自力ではい出したものの、全身を打撲し、親指の骨折と胸の軟骨損傷を負い、25時間かけて下山。「実はここ数年、登る前から心身共に疲れていた」と話す。
地上で栗城を悩ませているのは費用の壁だ。8000m峰への遠征は、技術と体力だけでは実行できない。特に最新のIT技術を駆使して中継を行う栗城の場合、スタッフや機材の量が多く(今回のエベレスト登頂は日本から約1トンの荷物を運ぶ)、その資金繰りに東奔西走してきた。「この一年間、全国の講演会で“お兄ちゃんはがんばっているんだよ”と子どもたちに伝えてきました」。日本のみならず、中国や韓国、アメリカなどでも講演とスポンサー営業を重ね、オフの日をほとんどなくしたが費用の壁は乗り越えられない。疲労困憊状態でシシャパンマに登山した結果に待っていたのが滑落だった。栗城は「心と身体には限界があるということを山から学んだ」「奇跡が起こるのはそう多くはない」とブログに綴った。
大規模プロジェクトとしては、これが最後の挑戦。そう肝に命じる今だが体調はすこぶる良いという。「クレバスに落ちてから、悪いモノが取れたかのように精神的にも肉体的にも集中しているんです。今回が一番登れるような気がします」。そして、「これまでは魔物に挑む感じがしていた」と、エベレスト登頂の怖さも明かした。今は、それを感じないと言うのだ。

今回も山頂からの生中継に挑戦
ラジコンヘリによる空撮も待っている

今回、栗城は3つの大きなチャレンジをする。一つは、これまで同様にエベレスト山頂へ、ベースキャンプからの単独・無酸素登頂を目指すもので、前回同様に登山者の少ない厳しい秋季を選んだ。そして、南東稜ノーマルルートではなく西稜ルートからの難しいアタックという挑戦を新たに課した。登頂は10月上旬を予定している。
2つ目は「冒険の共有」を目指した生中継だ。2007年にチョ・オユー(8201m)で初めて動画配信を行って以来、栗城はマナスル(8163m)、ダウラギリ(8167m)での生中継と動画配信を行ってきた。もちろん、これまでのエベレスト挑戦でもUstreamやTwitterを使って情報を発信し、多くの人々に勇気と感動を与えた。今回も、栗城のカメラから送られた電波をベースキャンプがキャッチし、通信衛星を通してネット配信される。
この世界最少規模のエベレスト生中継は5回予定されていて、パブリックビューイングを開催して「多くの人が持つ心の壁を取り払う」ことを目指す。さらに今回はラジコンヘリが登場。単独で登る栗城の姿を映すために、低酸素・低気圧でも飛べるように製作された無人のリモコンヘリ3機と有人ヘリ1機を投入し、エベレスト初のラジコンヘリによる空撮に挑戦するのだ。これまでの第三者によるカメラは栗城を見上げる映像だけだったが、今回は鳥のような感覚で観ることができると思うと今から楽しみである。世界初なだけに、「誰も見たことのないエベレストが待っていると思います」と栗城も笑顔で話した。

エベレストをモチーフにした栗城のロゴが入ったラジコンヘリはドイツ製。8枚のプロペラによる安定した飛行で、ブレの少ない撮影ができる。標高5300mのベースキャンプから飛ばす予定。
記者会見には所ジョージさんからの応援ビデオメッセージも届けられた。

今回のインターネット生中継の仕組み。数百人のクルーで行われるテレビ局の中継と比べて、非常に少ない人数で行われる。今年の春にナジョナルジオグラフィックが試みたが失敗したため、山頂でのネット生中継は前人未到のままだ。illustrated by ナカオ☆テッペイ

登頂成功だけが目的ではない
夢が実現できることを伝えたい

そして3つ目の挑戦はドキュメント映画の製作だ。「今まで“リアルタイム”にこだわってきましたが、何かを残したいと思うようになりました」。栗城はソーシャルメディアを利用して山の上から多くの人々を励まし続け、彼自身もその返事に力をもらってきた。そして今はネットでつながった人だけでなく、映画を通してより多くの人にメッセージを伝えたいと願っている。
「僕の本当の目的は“あんなお兄ちゃんでもできるなら、僕にもできる”と思ってもらうこと。チャレンジする人を日本中に増やしたいんです」。昔は「がんばって」という声が多かったが、最近は「私も新しいことに挑戦しています」というメッセージが増えた。栗城は力を込めて言った。「その目的は果たしつつあります。だから、あとは頂(いただき)に立つだけなんです!」
9月上旬現在、悪天候の影響で予定が少し遅れたが、ベースキャンプに入る栗城。最初のインターネット生中継は9月21日の予定(Ustream http://www.ustream.tv/channel/teamkuriki)。今回も彼の偉大なる冒険を共有して感動しようではないか。きっとそこには、私たちの変化が待っているから。

From Faust A.G. Channel on [YouTube]

8月26日、羽田空港にて出発直前の決意表明。
★【YouTube:FaustA.G.チャンネル】でもご覧いただけます(スマートフォンの方 はこちらがオススメ)

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栗城史多オフィシャルサイト
http://kurikiyama.jp/

ブログ:http://ameblo.jp/kurikiyama/
Facebookページ:http://www.facebook.com/kurikiyama/
Twitterアカウント:kurikiyama

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