Vol.42
砂漠の炎
Gas Crater, Turkmenistan /トルクメニスタン・ガスクレーター
写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。
Vol.42
砂漠の炎
Gas Crater, Turkmenistan /トルクメニスタン・ガスクレーター
写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。
トルクメニスタン中央部に広がるカラクム砂漠。ゴツゴツとした岩と砂が入り交じる荒野はなだらかに波打ち、地平線の彼方まで続いている。その先に太陽が沈み、日が暮れていく。
徐々に闇が荒野を浸食し、同時に、目の前にぽっかりと開いた巨大な穴の中で炎の明かりが輝き始める。穴の大きさは直径80mぐらいはあるだろうか。平らな大地に突然、大きな口を開けて広がっている。その巨大な穴からは炎が絶え間なく吹き出している。炎の柱は龍のように闇を切り裂き、真っ赤なその炎は、まるで自分たちが最も明るく輝く夜が来たことを、喜んでいるかのように燃え盛る。
穴の淵に経ち、そこから吹き上げて来る熱風を感じながら、この世のものとは思えない光景に心を奪われる。
ガスクレーターと呼ばれるこの炎を吹き出す穴は、数十年前の天然ガス試掘の際に爆発しできたもの。それ以来、ずっと地中からガスが噴き出し、炎が燃えている。
トルクメニスタンは不思議な国である。豊富な天然資源で国内経済は潤い、首都のアシュガバードはどこまで行っても眩しい白で統一された真新しい建物が並ぶ。街のあちこちに2006年まで独裁体制を敷いていた前大統領の黄金像が建てられている。その不思議な都市は砂漠の荒野に忽然と現れ、その異様さを際立たせている。そして郊外の砂漠に立ち入れば、今度はこのガスクレーターのような他に類を見ない光景が目に飛び込んで来るのである。
この世界一周の旅に出てすでに70を越す国と地域を見て回って来たけれども、この国が一番独特で不思議な雰囲気に包まれているような気がする。
夜が更けるにつれて、炎はますますその輝きを増していく。世界は不思議に満ちている。長く旅したせいで摩耗した好奇心や感度の落ちた心の感受性も、ガスクレーターの前では関係ない。
この夜、炎はいつまでも僕の心を鷲掴みにして離すことはなかった。
写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。
「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま
竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com
著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)
2012/10/11
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