Vol.40
終わりに向けての旅
Cappadocia, Turkey/トルコ・カッパドキア
写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。
Vol.40
終わりに向けての旅
Cappadocia, Turkey/トルコ・カッパドキア
写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。
この旅を始めるとき、どこからスタートして、どういうルートで周るのかということを、当然ながら大まかではあるけれども決めなければならなかった。世界一周なので、簡単に言ってしまえば、日本を西に出て東から帰って来るか、それとも東へ向かい西から帰って来るか。そのふたつしかない。
西か東か。その進むべき方角の答えは、迷わずすぐに出た。まずは東へ向かう。それが僕がこの旅でした一番始めの判断。その理由は、東へ向かいたいというよりかは、西から帰ってきたいという思いからであった。出発当時、自分にとっては未知に近かった南米をまずは乗り越え、その旅の自信と経験を持って難関のアフリカ大陸へ向かう。アフリカ大陸からはヨーロッパへジブラルタル海峡を渡りヨーロッパに行く。そして最後のユーラシア。
東へ東へと故郷を目指す。国境を越えるたびに、少しずつ日本に近づいて行く。自分のこの一歩が日本につながって行く。食べるものが変わり、人種が変わり、文化が変わり、さまざまなものがめまぐるしく変化して行く。そしてその変化を経るたびにすべての物事は日本へとつながって行く。それまでの旅が長ければ長いほど、辛ければ辛いほど、その変化は自分にとって大きな安堵感と達成感を生むだろう。その感覚を得たい。そう思っていた。
ヨーロッパとアジアを隔てるトルコのボスポラス海峡を渡ったとき、アジアにたどり着いたんだな、という実感が湧き胸が締めつけられる思いがした。
ユーラシアを東へ向かうと当初想像していたように、故郷へつながる道を歩いているような感覚を得ることはできる。しかし、それと同時に、アジアに入った瞬間に、この一歩一歩が旅の終わりにつながるというなんとも言葉では説明のしようの無い複雑な気持が心を満たし始めたのだ。
胃はきりきりと痛み、車窓の風景を眺めては物思いにふけり、気がつけばため息をつく。
旅を始める時、その決断に要する葛藤や心の準備は決して少なくはなかった。旅立つということは心の底では決まっている。でもそれを自分自身に納得させ馴染ませなければならない。それには多くの時間とエネルギーが必要だったし、めまぐるしい心の動きもあった。それを経て旅に出た。
そして海峡を渡った瞬間、その逆を感じ始めたのだ。旅の終わりへ向けての心の準備。僕にはまだその準備が全くと言っていいほどできていなかった。なので海峡を渡りアジア側に辿り着いた時、心の中に急激な圧迫感を感じてしまったのだと思う。旅の出発時に感じたような心の奔流を、いまもう一度、終わりに向けて感じ続けなければならない。旅に始まりがあって、終わりがある。旅を始めるのも大変だけれども、旅を終わらせるのも、同じように大変なのかもしれない。
そんなことを、トルコ中部に位置するカッパドキアで朝の透明感に満ちた空気に包まれてフワフワと幸せそうに浮かぶ気球に乗りながら、考えていた。
終わりに向けての旅が、始まった。
写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。
「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま
竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com
著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)
2012/09/06
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