Vol.16
氷の大陸
Antarctica/南極
写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。
Vol.16
氷の大陸
Antarctica/南極
写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。
ウシュアイアを出航して丸2日間。荒れるドレーク海峡を越えると海は急に穏やかになり、船室の外が静かになった。
朝、目覚めて船外に出ると、そこには一面氷の世界が広がっていた。空気は触れるだけでパリパリと音を立てるかのように冷たく鋭い。その空気の先に南極大陸が見渡せる。雪と氷に覆われて、その下にある力強い岩や柔らかな土壌は見えない。わずかに露出した地面は、生き物たちの格好の避寒地。ペンギンが群れをなしてコロニーを築いている。
南極半島の一端に上陸し、散策。ズボズボと雪に足を取られ、丘を越え、流氷が洗う浜を歩く。ペンギン、ゾウアザラシ、アホウドリたちが島のあちらこちらで見かけられる。大半のペンギンはいま卵を体に抱えながら暖めている。短い夏は繁殖の季節である。メスは卵を抱えじっとこらえ、オスは不器用な歩きでせっせとメスのために小岩を集めてきては巣を作る。
不器用に歩くペンギン、いつまでたっても寝てばかりのゾウアザラシ、冷たい海から時折その巨体の一部を覗かせて潮を噴くザトウクジラ。それらの生き物たちを支えているのはすべて、この冷たい海である。巨大な流氷が浮かび、緑色に濃縮されたこの海は、生命に溢れ、栄養に満ち満ちている。ペンギンやアザラシ、クジラたちの生きる様を見ていると、それらを支える海の豊かさがつぶさにわかり、すると海を越えて吹き付ける南極の冷たい風の中に生命の暖かみを感じる。この温もりはこの溢れる生命力の源である南極の海から来ているのかもしれない。
深夜12時頃。陽が沈み、空は淡いピンクに染まった。
この時期の南極には本当の闇の夜はない。深夜に陽が沈み、そのあとは淡い紫色をした明るい空が数時間続き、朝の3時過ぎには日がまた昇る。南極の夕焼けはとても長く、いつまでたっても空はピンクに染まったままであった。それはまるでこの大陸が持つ生命の温もりの色のようだった。
写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。
「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま
竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com
著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)
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