Vol.9
マチュピチュからアマゾンへ
Rio de Urubamba, Peru / ペルー ウルバンバ川
写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。
Vol.9
マチュピチュからアマゾンへ
Rio de Urubamba, Peru / ペルー ウルバンバ川
写真家・竹沢うるまが切り撮る“現在の地球”
いま、世界一周の途中。
マチュピチュから川を下ってアマゾンまで行けるらしい。
出会った旅人からそう聞いたのは、ペルーに入ってからまもなくのことだった。マチュピチュはアンデス山脈の奥の奥、3000m級の山をいくつも超えた先にある。世界中から観光客がやって来る場所だが、標高は2400m。そこへのアクセスは非常に険しい。一方で、ペルーは、アンデス山脈のイメージが強いが、じつは国土の大半は鬱蒼としたアマゾンのジャングルに覆われている。
南米を訪れる前まではアマゾンと言えばブラジル、と思っていたが実際はそうではなく、ペルー、ボリビア、コロンビアなどいくつもの国にまたがってジャングルは広がっている。アンデス山脈に降り注いだ雨は、川となりペルーにあるアマゾン地帯、ペルーアマゾンに流れ込み、やがて広大なアマゾンの熱帯雨林の動脈、アマゾン川に合流する。そんな川がアンデス山脈中に無数にあり、そのうちのひとつのウルバンバ川も、マチュピチュ付近を通り、アマゾンまで通じているという。
正直、このとき情報はほぼなかった。わかっているのはただこの川がアマゾンまで通じているということだけ。あとは、見渡す限りの緑のジャングルで無数の生き物たちが息をひそめているという、僕が思い描くアマゾンのイメージがあるだけであった。
まず、マチュピチュ近くのウルバンバ川沿いの小さな集落、サンタ・マレアに行き、川沿いに陸路を進みイヴォチョテまで行った。イヴォチョテは人口100人程の人が住む小さな集落である。川辺に行くと木造の船がいくつか並んでいる。交渉して、とりあえず行けるところまで行ってもらうように頼み、乗り込んだ。
船は木造カヌーに小型のエンジンがついた簡素なものである。基本的には荷物を運ぶためのもので、座るところもなければ屋根なんて気の利いたものなんてまずない。その船で、川を下る。やがて難所のポンゴ・マイキに差し掛かった。ここは左右一面ずっと滝が流れ落ちる場所で、雨期にはまず通れないという。乾期でもここを通ることを嫌がる船頭は少なくないという。恐る恐る船はこのエリアに入って行ったが、幸いこのとき水量は少なく、無事に抜けることができた。その日は、カミセアというインディヘナが住む集落まで辿り着き、そこで野宿。
翌朝、さらに下流へ向かう船を探し交渉。その翌日もほぼ同じ。景色は何も変わらず、滔々とウルバンバ川が流れるのみ。それを3日繰り返した。
やがてアタラヤと呼ばれるペルーアマゾンの街に到着した。ここは川でしか他の街とつながっていない、ジャングルの孤島のような街だ。ここまで来るともうペルーアマゾンの入り口である。この街で、さらにアマゾンの奥地に行くという貨物船に便乗させてもらい、さらに川を下ること4日。
その4日間のウルバンバの川下りの苦労は語るに尽くせない。餌のようなご飯、川の真ん中で座礁、川靄が生み出す猛烈な湿気、照りつける太陽。ただひとつ、夜中、月の光が浮かび上がらせる鬱蒼としたジャングルの美しさのみがこの船旅の唯一癒しの時間だった。
最後にペルーアマゾンの奥地の街、プカルパに到着した時に目にしたその明かりの美しさと感動は、どう言葉で表現しても言い表すことはできない。
マチュピチュからアマゾンまで。未踏のルートを辿った一週間。またしたいとはまったくもって思わないが、いい経験であった。
写真家・竹沢うるまは今現在、陸路での世界一周の空の下にいる。2010年3月に東京を出発し、アメリカからスタート。中米、南米、アフリカ、ヨーロッパ、中近東、アジアを巡り、日本へと帰る旅。帰国は2011年、場合によると2012年になるという。
目的は“現在の地球の姿”を、その若く瑞々しい感性で写真で記録すること。この連載は、地球のどこかを旅するうるまから届く、生の写真とエッセイをお届けするものだ。 さらに、うるまが本当のゴールとするものは、30年後に再び同じルートで世界を撮影して巡り、写真を比べること。そして、ひとりの人間の半生の間に、地球はどこに向かったのかを映し出すこと。
「私たち人間は、この地球という星のことを、一体どれだけ自分の言葉で語れるでしょうか。“ボクらが生まれた星”はいったい今どんな姿なのか、ひとりでも多くの人に伝えたいと思います」――竹沢うるま
竹沢 うるま
1977 年生まれ。写真家。「うるま」とは沖縄の方言でサンゴに囲まれた島の意。出版社のスタッフフォトグラファーを経て、2004 年独立、URUMA Photo Officeを設立し活動開始。雑誌、広告の分野で活躍し、海外取材は通算100回を超す。世界中の自然を主なフィールドにする自然写真家。現在、世界一周の旅を敢行しながら作品を寄稿中。立ち寄った国はすでに10カ国を超えた。
公式サイト www.uruma-photo.com
著作物
写真集「URUMA –okinawa graphic booklet-」(マリン企画)、「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(小学館から2010年7月20日に発売)。その他ポストカード、カレンダー等。
個展暦
2005年「TWILIGHT ISLAND」(DIGZ原宿)、2007年「Rainbow's End」(Palau Pacific Resort)、2007年「URUMA -日本の異次元空間を旅する-」(丸善・丸の内本店)、2008年「Tahiti ~タンガロアが創った島々~」(PENTAX FORUM)、「Tio's Island」(大手町カフェ) 、2009年「Tio's Island ~南の島のティオの世界~」(KONICA MINOLTA PLAZA)
2010/11/04
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