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02 SOUL

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まずは自分自身の意識を変えること。
それが社会貢献への第一歩

エリック・ウアネス 国境なき医師団 日本事務局長

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I’m starting with the man in the mirror
I’m asking him to change his ways…
If you wanna make the world a better place
Take a look at yourself and then make a change


「より良い世界にしたいなら、まず鏡の前の自分から変わればいい」――。これは1988年、マイケル・ジャクソンがシングル『Man in the Mirror』のなかで伝えた印象深いメッセージです。慈善活動や環境問題の解決に非常に熱心だったマイケルですが、彼のように社会に貢献したいと思ったとしても、何をどこから始めたらいいのだろうと悩むファウスト会員の方々もいらっしゃるかと思います。先日開催された「Faust A.G. Awards 2009」で“ファウスト社会貢献活動賞”に輝いた坂本達氏のように、社会貢献活動のきっかけとなる命がけの出来事に遭遇した方を除いては……! それゆえに、マイケルの伝える「自分から変わればいい」、つまり自分の意識をまず変えればいいというシンプルなヒントはストレートに心に響いてくるのではないでしょうか。

今回、Faust A.G.のインタビューに応じてくれた国際NGO団体「国境なき医師団」の日本支部事務局長エリック・ウアネス氏も、まさに「まず自分から変わった」というべき人物でしょう。将来を約束された大手企業のビジネスマンから、29歳で飢餓問題に取り組むNGO「アクション・アゲインスト・ハンガー」に転職し、2002年より「国境なき医師団」に参加というキャリアを持つウアネス氏。戦地や貧困に苦しむ地域に赴き、数多くの医療援助プログラムに参加してきました。なぜ彼は変わることができたのでしょう? そして「国境なき医師団」の活動を通していま彼が叶えたい夢や挑戦とは一体何なのでしょうか――?

ウアネス氏の人生において、そして人道支援を行う人間と して、さまざまな文化を理解することは最も大事な要素のひと つだとか。「日本に来て4年になりますが、知れば知るほど複 雑ですね。まだまだ知らないことだらけです」

――「国境なき医師団」についてまず教えてください。
独立した民間の国際的医療・人道援助団体です。19カ国に支部があり、活動国は現在約60。医療のない地域の人々、なかでも特に弱い立場におかれている人を対象とする医療援助が活動の中心です。具体的には、医療スタッフのほか財務や人事など各分野の専門家を現地に派遣し、プログラムを遂行していきます。

――なぜウアネスさんは会社を辞め、人道援助活動に参加しようと思われたのですか?
理由は3つあります。ひとつめは、私はフランスの一般企業に勤めていましたが、そこは辞めない限り自分が将来どんな道を辿るのかわかりきってしまう環境だったからです。何のために働くのかわからなくなり、仕事をする意義を実感できなかった。ふたつめは、人を助けることに関わりたいと思ったから。そして3つめは、未知の文化や人々に触れたいという欲求からです。

――援助活動とはいっても、自身の欲求に忠実な部分がある……。だからこそ、ご自身の生き方を変えることができたのですね。
新しい文化や人々に出会うのは、とても楽しいことです。また、この仕事をしていると辺境の地に赴くことが多いので冒険家の側面も持ち合わせているといえます。欧米諸国では実際、私のような人道援助活動をする人間を「善行を施す冒険家」と表現することがあるくらいなんですよ。

日本ではすでに絶滅したような病気が、アフリカではまだ存在 する。「国境なき医師団」に参加する医師たちにとっても、そ ういった病気の治療を行うことが自身の経験にプラスになると いう。
大地震や台風などが起きた災害地に、緊急ミッションとして派 遣されることもある。1日20人以上の外科手術が必要になるケ ースもあり、肉体的にも精神的にもハードだが、医師たちへの ケアやサポートも充実している。

――冒険と社会貢献がリンクしているなんて、これぞまさにファウストのコンセプトと共通していますね!
この仕事をしていると、ある意味で利己的というか、自分の知識欲のために辺境の地へ行く部分があることは否めないと思うのです。現地の人々と触れ合うことで、自分が忘れてしまっているような価値観を思い出させてもらったり、自分自身が成長するための知識を満たしてもらうことが多いからです。医療が十分に行きわたっていない地域において無料で治療や薬の提供を続けることができるのは、我々も彼らから得るものが多く、それが自分たちへの報酬といえるほど価値があると思っているからなのです。そんな仕事に就けているなんて、とても幸運ですよね。

――率直にお伺いしますが、ビジネスマン時代の生活に戻りたいと思うことはあるのですか? 援助活動には大変な苦労もたくさんあるかと思いますが。
私の場合、人の命を助け、人を相手に援助活動をすることに中毒性があるといいますか、もうこれ以外の仕事につけないと思えるんです。「国境なき医師団」には、私のように民間企業から転職してくる人が多くいるのですが、それを後悔しているという人は見たことがありません。人の援助には終わりがないので、非常にやりがいを感じることができます。そして先ほども申し上げたように、新しい文化に触れると自分の世界が大きく広がります。これにも中毒性がありますからね。

給水設備を整えて飲み水を確保するなど、プロジェクトに は医師だけでなくさまざまな分野の専門家も参加している。

――これまでのキャリアで最も辛かったことは何ですか?
紛争最中のアフガニスタンへ派遣されたことがありますが、本当の戦争による生の爆撃音が忘れられません。みなさんの想像を超えていると思います。また、人道援助者として海外から現地に来ている私としては、帰国すれば安らげる自宅があります。ところがアフガニスタンのように内戦が30年続いていたような場所だと、生まれてからずっと戦争のなかでしか生きたことがない人もいるわけです。その事実が自分にとってショックでした。そんな彼らの状況を考えたら、数カ月の任期しかない自分なんて取るに足らないと。

――現地の人に非難されてしまうことはないのですか?「帰れる家があるじゃないか!」と攻められるとか……。社会貢献活動というものが偽善的に思えて、積極的になれない人もいるかと思います。
非難されることはないですね。言葉や文化が違っても、病気や怪我の治療を見て彼らは私たちが何をしているのかをわかってくれるので。かつて派遣されたブルンジでは、とても嬉しい体験がありました。700名ほどを収容できる病院を3カ月ほどかけて建設したときのことです。栄養失調で生死をさまよう子供たちが多くいた状態だったのですが、彼らが回復し、サッカーで遊んだり将来について考えたりする姿を目の当たりにしたときは本当に感動しました。全く何もない状態から、数カ月のうちにそこまで変化を遂げたのですから。

――援助活動を通して、辛いことも嬉しいことも経験されてきたウアネスさんですが、これからの夢や挑戦したいことを教えてください。
実は、夢というか野心はないのです。私は理想主義者でもありませんし、自分だけの手で世界を変えることができるとは思っていないからです。人の命を救おうという仕事なので、それ以上の夢はありません。しかし、日本に4年間住んでいる私としては、日本の社会のみなさんに人道援助への関心を持ってもらいたいですね。それが今の私の夢であり挑戦です。日本は環境とか高齢者問題への注目が多く、人道援助への認知はまだあまり高くありません。人道援助も社会貢献の一部ということを知ってほしいですし、世界市民として、住んでいる地域に関わらず助けを求めている人を援助してほしいと思っています。募金をはじめ、PCなどの物品提供という貢献のスタイルもありますし、企業単位で参加いただけるプログラムもあります。何かをはじめたいという方はいつでもご相談いただけると嬉しいです。

 

 

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エリック・ウアネス
Eric Ouannes
1967年フランス生まれ。1995年、エセック経済商科大学大学院にてマネージメントおよびロジスティクス・エンジニアリング修了。大手企業に勤めたのち、飢餓問題に取り組む非営利組織「アクション・アゲインスト・ハンガー」を経て、2002年に国境なき医師団に参加。アフガニスタン、シエラレオネ、コンゴなどにおける活動責任者を歴任し、2006年より現職。

Data

国境なき医師団
http://www.msf.or.jp/

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いま、世界一周の途中。

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