北極点単独踏破挑戦の荻田泰永
苦渋の決断と再出発への決意
北極点単独踏破挑戦の荻田泰永
苦渋の決断と再出発への決意
当クラブが最も注目する冒険家のひとり荻田泰永氏が、日本人初の北極点無補給単独踏破挑戦のスタートから14日目の3月17日、リタイアを決定した。苦渋の決断だったということは想像するまでもない。だが、そこには極地冒険の技術の向上や研究が進んだ現在でさえ、行く手を阻む困難な問題があった。
帰国した荻田氏が、代官山にあるシアターサイバードにて「2012年北極点無補給単独徒歩行」プレス会見を行なった。北極点の天候とは比較にはならないが、この日は奇しくも「爆弾低気圧」なる暴風雨が日本全国で猛威をふるっていた。
冒険を中止した理由について、荻田氏は「近年の海氷状況の悪化」を挙げる。水深4000mの北極点付近を覆う氷はわずか3m。足元の海氷は常に流れ動いている。90年代以前に比べ現在の北極点の氷は加速度的に薄くなり、極地冒険を年々困難にしているのだ。
「2012年の海氷状態は過去に例をみないほど最悪でした。流動的になった海氷の各所には割れ目が生じ、また氷どうしが流れ動きながらぶつかり合い、巨大な乱氷帯を作り出していました。さらに滞在中の2週間に3度のブリザードが起き、海氷状態がさらに悪化していきました……」
ここでもう一度、今回の冒険を振り返ってみよう。既報の通り、2月16日荻田氏は成田空港を出発。一路バンクーバーへと飛んだ。
ここで食料や装備などの準備を整え、日本時間3月3日、カナダ最北部にあるエルズミア島ディスカバリー岬から、計110kgのソリ2台をひいて800km、50日間で北極点到達を目指す冒険をスタートさせた。
スタート直後の冒険の様子。
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だが今年は大西洋から侵入する低気圧によって天候が安定せず、ロシア側から流れてくる氷が完全に凍らない状態でいた。同時期に北極点を目指していた極地冒険家は次々にリタイアを決断していく中、スタートから14日目を迎えた荻田氏にも苦渋の決断をするときが迫っていた。「続けたい」という北極冒険家としての気持ちと、「現状進むことができるスピードで、限られたゴール期日までに北極点への到達は厳しい…」という戦略的な考えの間で揺れ動く。しかし、現実から目を逸らすことはできなかった。17日の朝、目が覚めた瞬間に荻田氏は決定を下した。「止めよう」。
帰国直後、自身のブログでは「実際に引き上げてしまうと『本当に引くべきだったのか、もっと行けたんじゃないか』という悔しさと疑問が行ったり来たりします」
と複雑な心境を明かしていた。しかし、的確な判断を下すことも極地冒険家に課せられた使命である。
「凍った海氷の上を進む」という北極の冒険は、気象がその成功率を左右する。近年の不安定な気候は北極冒険の成功率を年々低下させている。来年の氷の状況を誰が知り得るだろう。さらに悪化している可能性も十分ある。それでも荻田氏は、もうすでに来年の挑戦を見据えている。近年の海氷状態をふまえてどういったスタイルで臨むべきか、今回実際に体験したことは、次回の冒険プランに活かすことができるだろう。また、より軽量化した荻田オリジナルのソリの開発も進めている。すべては「北極点無補給単独徒歩到達」を必ず成し遂げるために。ファウストは、この強く、人間味溢れるひとりの冒険家が、北極点に到達し、そして無事帰還する日を楽しみに待ち続けたい。
荻田氏がサポートしてくれた人々に送ったメッセージ
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一般社団法人N.A.P(NorthPole Adventure Project)
http://northpoleadventure.jp/
荻田泰永氏ブログ 「北極点を越えて」
http://blogs.yahoo.co.jp/ogita_exp
Text:Faust.A.G.
2012/4/26
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