今も昔も、海底へのロマンと情熱を最も強く抱いているのは、フランス人なのかもしれません。
フランスの海洋冒険家ジャック=イヴ・クストーが“アクアラング”、すなわち潜水用呼吸器であるスキューバを発明し、映画『沈黙の世界』で海底の魅力と不 思議を紹介したのが今から約50年前のこと。言い換えれば、人類が海中を自由に泳ぎ回ることができるようになって、まだ50年しか経過していないのです!
クストーによるアクアラング発明後、さらなるテクノロジーの進歩により、海洋地質学、海洋生物学など、海にまつわる学問が一気に発展することになります。 彼の映画を観て、「神秘的な海底世界へ冒険してみたい」と夢見た少年少女が大勢いた結果と言えるでしょう。Faustメンバーの皆様にも、『沈黙の世界』 に圧倒された方は多いのではないでしょうか。
そんなクストーの偉業は現在、考古学の世界にも影響を及ぼしています。それが“海洋考古学”。その名のとおり、海底に沈む遺跡の発掘調査・保護などを行う学問で、日本ではまだ馴染みの薄いジャンルです。
そんな中、去る3月10日、その第一人者として活躍するフランス人海洋考古学者フランク・ゴディオ氏が来日しました。来日理由は、なんと海底に沈んだ古代 エジプト・プトレマイオス朝を中心とした貴重な海底遺跡の引き上げに成功し、それらを日本で公開するため! その遺跡の数々は、「海のエジプト展〜海底か らよみがえる、古代都市アレクサンドリアの至宝〜」と称して、2009年6月から横浜で一般公開されるのです。
写真をご覧ください。ゴディオ氏率いる探索チームが発掘したのは、約5mもあるファラオ像やスフィンクス像、クレオパトラの横顔が刻まれたブロンズコイ ン、ゴールドの輝きを放つアクセサリーなど、約490点。展覧会では、2000年もの前に生まれ、その後1200年のあいだ海底に眠っていたと言われるそ れら日本初公開の貴重な品々を、自分たちの目でじっくり見ることができるのです。
「海洋考古学をやっていて、一番幸せに感じる瞬間。それは、視界の悪い海底に潜って、突然目の前に遺跡が飛び込んでくるときです。地上での発掘と違い、多 くの機器探査を必要とし、その上に仮説をたて、データ収集をしたあとにダイバーが潜水します。時間と労力が非常にかかりますが、美しい遺跡に対面したとき はその苦労も忘れます」とゴディオ氏。
彼もクストーのように、海の底の世界に熱いロマンを感じるフランス人。しかも、ロマンだけでなく冒険家さながらのチャレンジ精神も持ち合わせているのです。
「もともと歴史と冒険が好きでした。昔は今ほど海洋考古学がメジャーではなかったし、海に潜って発掘するなんて、挑戦しがいがあることだと思ったのが海洋考古学を始めたきっかけです」
まさにファウスト魂を体現していると言えるゴディオ氏のアレクサンドリア海底発掘は、現在もまだまだ続行中。彼の予測だと、100年は終わらないとか!
ゴディオ氏は、「世界でもっともお気に入りの場所は?」という質問に対し、「海中!」と即答するほど海を愛しています。きっと、海中に沈んだいにしえのアレクサンドリアを、生き生きとした姿で現代に呼び覚ましてくれるに違いありません。
写真/上段左、中央、右、下段右:(C)Franck Goddio/Hilti Foundation-Photos:Christoph Gerigk
下段中央:(C)Franck Goddio/Hilti Foundation-Photos:Christoph Gerigk(コイン)
下段左:(C)The Asahi Shimbun
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