「どうか、このチャレンジが成功しませんように」
英国人冒険家のルイス・ゴードン・ピュウ氏はそう祈りながら、2008年8月31日、ノルウェー領スバルバル諸島から北極点を目指してカヤックでの旅に出発しました。
北極点近辺は、年の平均気温がマイナス6.2度、最低気温はマイナス42.2度。確かに8月~9月は平均0~3度と比較的暖かい(!?)そうなのですが、 水温はマイナス1.5度~1.8度と、やはり冷たい。そんな過酷な条件のもと、屋根も囲いもエンジンも一切なしの吹きっさらしのカヤックで、1200㎞に 及びバレンツ海と北極海を横断するというのですから、通常ならば、“成功”を目標とするはずなのに……と皆様も疑問に思われることでしょう。
ピュウ氏のチャレンジを記録すべく、カメラマンも命がけで随行。
その不思議な真意は、過去に北極地域で6年間を過ごしてきたピュウ氏の体験に基づいたものでした。
「その時に、気候の変動に伴う劇的な氷の現象や環境変化を目の当たりにして、人類存亡の危機を実感したのです」と語るピュウ氏。
つまり、海を進むカヤックで北極点に到達できるということは、海の氷が著しく減少していることを指し、科学者たちの「地球温暖化の影響で、早ければ今年の 夏にも、北極点から氷が無くなるかもしれない」という警鐘を実証することになるのです。ゆえに、「ポーラー・ディフェンス・プロジェクト」と名付けられた この冒険は、氷床が急速に溶けつつあることを世に知らしめることを目的とし、ピュウ氏は、体力の限界やセイウチに襲われることによる失敗ではなく、氷河に 阻まれて進めなくなることを願って挑んでいるのです。
過去には、北極でのスイムに挑んで「人間北極グマ」との異名を拝し、英国が誇る英雄の一人としてブレア前首相にも讃えられている彼は、約20人に及ぶチー ムに支えられ、“失敗”を目標に全力漕櫂。海氷と海氷の間を縫うように漕ぎ進み、“不運にも”順調な場合は2週間前後で北極点に到達すると想定されていま したが、嬉しいことに、出発して5日目に断念されました。北極点に到達できた場合、氷床が溶けつつあることを全世界に警告する意味で、世界192カ国の国 旗を立てる予定でしたが、“失敗した”にも関わらず、喜びの余りに最寄りの氷床に192本の旗を立てて記念撮影(撮影後、即撤去!)。
「北極を守らなければならない。ホッキョクグマや我々の子孫のためではなく、私たち自身が生き延びるために。事態はそれほど切迫しているのです」と熱を込 めて語るピュウ氏は、今後も北極の環境危機を訴えるため、動物や自然の代弁者として活動を続けるとのこと。壮大な視野と果敢な勇気をもって、極寒の北極に て身体を張る彼に、Faust A.G.は心からの賞賛と声援を贈って行きたいと思います。
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