タンザニアの世界遺産で遭遇する
究極のサファリとラグジュアリーロッジ
タンザニアの世界遺産で遭遇する
究極のサファリとラグジュアリーロッジ
これまで世界を旅した中で、最もラグジュアリーな宿はどこだったかと問われれば、私は迷うことなくシンギータと答えるだろう。南アフリカのシンギータは、2004年、アメリカの旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」と「トラベル&レジャー」の読者投票で「世界一のホテル」として二冠に輝いた伝説のラグジュアリーサファリロッジ。そのシンギータが、タンザニアの世界遺産・セレンゲティ国立公園に開業したのがシンギータ・グルメティ・リザーブスである。
サボラ・テンテッド・キャンプのリビングルーム。大平原の真ん中というワイルドなロケーション。映画『Out of Africa』に描かれた20世紀前半のサファリスタイルを再現。テントタイプの客室が9棟。パブリックスペースもすべてテントスタイルである。
サファリというとケニアを連想する人が多いかもしれない。だが、ヌーの大移動で知られるケニアのマサイマラ国立動物保護区は、タンザニアのセレンゲティ国立公園と国境を接しており、セレンゲティ・エコ・システムと呼ばれるヌーの大移動のエリアは、実は大部分がタンザニア側にあるのだ。シンギータ・グルメティ・リザーブスは、まさにその心臓部に位置する。
ここは、もともと国立公園の周辺にあるハンティング用の私有地だった。南アのシンギータもそうなのだが、アフリカのラグジュアリーサファリロッジは、自前の保護区(リザーブス)を所有するところが多い。名称が「グルメティ・リザーブス」であるのはそのため。34万エーカー(約1万3600平方キロ)という広大な土地のなかに3軒のロッジが点在している。
プライベートのサファリが贅沢な理由は、広大な敷地が、ロッジのゲスト(グルメティ・リザーブスであれば、満室であってもわずか70名)で独占できることにある。国立公園、特にケニア側のサファリでは、一頭のライオンに何台ものサファリカーが取り巻くような状況も少なくない。国立公園は、規則も多い。サファリカーを降りることや日没後のナイトサファリは禁止されている。だが、プライベートリザーブでは、これらもすべてOK。プライベートのラグジュアリーサファリロッジでは定番のお楽しみである「サンダウナー」と呼ばれる夕暮れ時のカクテルタイムでは、サファリカーを降りて、これを楽しむことが出来るのも、プライベートならではの贅沢である。シンギータのリザーブスでは、動物にも人間にもストレスなく、大自然のスペクタクルに遭遇することが出来るのだ。
サファリロッジの朝は早い。まだ太陽が昇るか昇らないかという頃、季節にもよるが、たいてい午前6時にはモーニングティーが始まる。朝と夕方が、野生動物が活動する時間だからだ。ゲストには、旅館の仲居さんのように専任のレンジャーがつく。
シンギータでの私たちの担当は、アーノルド。キリンマンジャロの麓の出身という、動物を見つける勘のいい青年だった。彼らの腕が、いいサファリになるかどうかを左右する。馴染みのレンジャーを指名するリピーターも多いという。
シンギータのサファリカーとライオン。動物はこのくらいの至近にやって来る。
サンダウナーのカクテルを用意するレンジャーのアーノルド。。
ちなみに、ラグジュアリーサファリロッジは、たいていがオールインクルーシブ。一日2回、朝と夕方のゲームドライブのほか、食事や飲み物も含まれている。
私がシンギータ・グルメティ・リザーブスを訪れたのは7月下旬のこと。実はヌーの大移動には、少し遅い時期だった。ところが、その年は、ヌーの到着が遅れていた。シンギータが擁する3つのロッジの一つ、ササクワ・ロッジに到着すると、晴れやかな笑顔で迎えてくれたマネージャーが言った。
「あなたたちの到着を待って、ヌーもちょうど私たちのリザーブに着いたばかりよ」
そして、その日から、まるでナショナルジオグラフィックのドキュメンタリーフィルムの中の迷い込んだような、大スペクタクルが始まったのだった。
セレンゲティ・エコ・システムと呼ばれるエリアを循環する動物は、ヌーを筆頭に、シマウマ、ガゼルなど約200万頭。このとてつもないスケールの自然現象が、いわゆるヌーの大移動と呼ばれるものだ。 ヌーの群れがやって来ることは、ライオンやチーターなどの肉食獣にとっては、ご馳走の到来を意味する。獲物はいくらもいるから、肉食獣の親は、子供に狩りの練習をさせる。ハンティングに遭遇する機会が多いのも、この時期のサファリの醍醐味だ。ライオンの襲撃を免れたヌーの子供が川に逃げ込んでワニに食われる。自然の摂理は、時に残酷で情け容赦なく、しかし、だからこそ、命の輝きは美しい。
夕方、サファリを終えてロッジに戻ると、あたりは漆黒の闇に包まれていた。
サファリの夜は、「ボマ」と呼ばれる火を焚くのが昔からのきまりごと。その昔キャンプでは、この火を絶やさないことが動物から身を守る術だった。その習慣が今も守られている。ボマを囲んでアペリティフを楽しんだり、「ボマディナー」と呼ばれる屋外の夕食になるときもある。遠くに聞こえる声は、ライオンだろうか、それとも……。
日が暮れると、ロッジの敷地内といえども野生に帰る。だから、夕食後、コテージに帰るにも、レンジャーのエスコートが必要だ。
大自然の中にあって人間は、その闖入者でしかないことを、サファリの夜は教えてくれる。
夜の帳が降り、ボマの火が焚かれる。ファルファル・ロッジにて。
Singita Grumeti Reserves シンギータ・グルメティ・リザーヴス
日本での予約問い合わせ先:ルレ・エ・シャトー
TEL.03-5472-6789 http://www.singita.com
キリマンジャロ国際空港からロッジまではセスナ機を利用。ケニアのナイロビ国際空港からのアクセスもあり。ササクワ・ロッジUS$1650~、サボラ・テンテッド・キャンプUS$1045~、ファルファル・ロッジUS$1045~(いずれも1室2名利用の1人あたり)。滞在中の全食事、飲み物、一日2回のゲームドライブ、ランドリーなどを含む。
Text: Yumi Yamaguchi
2011/11/11
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