時計とは無限に広がる夢
ピエール・クックジャン「ドゥラクール」オーナー
時計とは無限に広がる夢
ピエール・クックジャン「ドゥラクール」オーナー
スイスの高級ブランドと言えば、まず思い浮かべるのが時計である。とにかく数多くの時計ブランドやメーカーがスイスには集中している。また、毎年初春になるとジュネーブやバーゼルでは時計の大きな見本市が開催され、世界中から多くの人々が訪れる。
さて、スイスの時計の中でも、ごく限られた人々にしか手に入れることのできない知る人ぞ知る、しかも超絶な機能を持つ時計が存在しているのはご存知だろうか。その時計こそは、ここ数年注目を集めている「ドゥラクール」という時計ブランドである。今回はそのブランドのデザイナーでもあるオーナーの1人、ピエール・クックジャン氏が、急遽初夏の日本に来日し、その際に話を聞くことが出来た。
――日本への来日は、何度目ぐらいになりますか?
実は、数多く来ていますし、日本食や日本の各都市でも興味をそそる事が多くあるので、今回の日本滞在は楽しみにしていました。
――各都市で興味をそそる事とは、何ですか?
私は、大きな都市空間も素晴らしいと思いますが、むしろ小道や路地を歩く事が好きですね。基本的に、私の発想の一部には散歩のような、ごく身近な行動から、いろんな時計のデザインや機能のインスピレーションが生まれるのです。
――早速ですが、新作のコンプリケーション・ウォッチについて教えてください。
今回は、日本の時計愛好家の方々に「ビレペティション」と言う、世界初の2つのミニッツリピーター機構を搭載したコンプリケーション・ウォッチを紹介するために日本に来ました。このモデルは、これまで私がデザインしてきた中でも、最も複雑な時計で、いわゆる時計の時刻を2つの時間帯で、チャイムを使って鳴り分ける仕掛け(ビレペティション=リピーター)のある時計です。さらに12時位置にはアルプスの山をデザインしたムーンフェイズがあり、その中を6分間に一回、流れ星が一瞬にして通過するユニークな仕掛けもあります。しかし文字盤は左右に2つの時間帯のレトログラード表示、センターには分表示の針、6時位置にはビッグサイズのカレンダーがあり、複雑な時計ではありますが、とても視認性は良く実用的な時計だと思っています。
――この「ビレペティション」を作るにあたっての、何かエピソードはありますか?
スイスには多くの高級で高度なメカニズムを持つ機械式時計がありますが、それらは、大きな規模を持つ時計企業が、ある程度の大量生産をして、いくつか共通する部品を使用しています。でも私たちのドゥラクールはオリジナルにこだわり、時計ケースをはじめムーブメントのサイズや歯車などに到るまで、ほぼ独自の規格のもの。今回の「ビレペテイション」のムーブメントでは666個の部品で作り上げられています。また、このオリジナル・ムーブメントの製造には、私の旧友である天才時計師のクリストフ・クラーレ氏が協力してくれました。
――クックジャンさんにとって時計とは、どのようなものですか?
単なる時刻や時間を意識する、と言うよりは「スピリチュアル」な感覚と無限に広がる「夢」のような存在感を時計には感じています。例えば666個の部品のムーブメントには、なんとなく「魔除け」のような意味を感じ、ムーンフェイズの中に流れ星を一瞬見せることでも、そこに何か願い事をしてみるのも一案のような気がします。そして何よりも腕時計の存在感は、自分にとって唯一無二の分身に感じています。
――最後に、クックジャンさんの今後のチャレンジについて、お聞かせ頂けますか。
私はコンテンポラリー・アートが好きなので、新しい芸術作品作りにチャレンジしたいと思っています。時計についても革新的アイデアの機構や、ケースのデザインに人間の体の曲線やカットを生かしたモデルなどを考えています。ポジティブに、新たなる挑戦を続けていきたいと思っています。
ピエール・クックジャン
1962年レバノン生まれ、スイス在住。「ドゥラクール」のオーナーの一人であり、時計のコンセプトを考え、デザインをするクリエイティブを担当する。世界の6カ国語を巧みに話す才人でもある。
Text:Masaki Ii
2010/09/09
地球最高の冒険者〈ファウスト〉たちを讃えよ! サイバードグループ・プレゼンツ「ファウストA.G.アワード 2015」開催概要
バトンが紡いだ未知なる40キロへの挑戦 中川有司 株式会社ユニオンゲートグループ 代表取締役&グループCEO / 株式会社セルツリミテッド 代表取締役
「至上の瞬間は、あらゆる時に訪れる」 G.H.MUMMの静かなる挑戦 ディディエ・マリオッティ G.H.マム セラーマスター
ネクタイを外したときに試される 男のカジュアルスタイルの極意とは ファウストラウンジ第10弾 「男の嗜み 〜ファウスト的 スタイリングの極意〜」