小さなフェラーリという異名をもつ
限定アバルトが、キャンセル待ち!?
小さなフェラーリという異名をもつ
限定アバルトが、キャンセル待ち!?
コラボレーション、もしくはダブルネームという商品は、最近では特に珍しいというものではありませんが、自動車業界では古くからその製造が行われてきました。1970年代のリンカーンにはジバンシーやカルティエが内装を手掛けたモデルがありましたし、クラシックMINIのポール・スミス仕様もありました。また、自動車業界同士では、シボレーとロータスが共同開発したコルベットZR1が当時かなり話題となったハイパフォーマンスモデルです。最近ではマクラーレンとメルセデスのSLR、アルファとドゥカティの147ドゥカティ・コルセ、というのも記憶に新しいところ。
そんな中、さらに強力なモデルが姿を現しました。アバルト695トリブート・フェラーリです……。
昨年10月、フィアットグループ・オートモビルズ・ジャパンは受注を開始。そして世界限定1696台のうちの150台を日本で販売し、約一週間で完売しました。また先月より、待望のデリバリーが開始されると、我々にも取材車が用意され、さっそくテストドライブを行うことに。
さて、目の前に現れたアバルト695トリブート・フェラーリ。これがものすごい存在感を放っていました。ボディはマラネロで使われる塗料と同じロッソコルサで塗られ、その中央には430スクーデリアばりのGTラインが入ります。パッと見の印象はまさにピッコロ(小さい)フェラーリといったところ。
では、中身はというと、ベースはアバルト500。お馴染みフィアット500の1.4リッターエンジンをターボで過給し、最高出力135psに仕上げたものです。
そしてそれに専用のフロントバンパーやリアエンドのディフューザー、17インチの専用ホイールなどが装着されました。赤く塗られたブレンボ製ブレーキキャリパーも出色です。
エンジンは135psを180psにパワーアップした1.4リッター直4DOHC+ターボチャージャーが搭載されています。フィアット500が100psであることを考えると、このサイズには十分すぎるといえます。ただ走行モードをノーマルポジションで走った場合は、このパフォーマンスを十分に味わうことはできません。シングルクラッチの5速ATシーケンシャルギアボックスが低回転でシフトアップを繰り返すからです。これはデータ上好燃費を出すためのプログラミングとなります。なので、“走り”を期待するならスポーツモードにすることをおススメします。この状態でパドルシフトを駆使して走らせるのがトリブート・フェラーリの真骨頂です。
走り出して感動するのはエグゾーストサウンドも同様です。レコード・モンツァと呼ばれる排気システムが3000回転あたりから乾いた高音を発します。残念ながらV8フェラーリのあの官能的なサウンドとまではいきませんが、なかなかいい仕上がり。目に見えないところまでチューニングしているのがこのクルマの醍醐味かもしれません。
インテリアに目を向けると、コクピットのデザインがそうした走り以上にレースの世界観を盛り上げます。フェラーリが採用しているイェーガー製のメーターやトリコロールのアクセントが付くレザーステアリング、それとカーボンシェルにレザーを貼ったバケットシートがフェラーリ風です。ダッシュパネルのカーボン調パネルもいいアクセントといえるでしょう。
ちなみに、「トリブート」は英語の「トリビュート」をイタリア語で記したものです。意味は賞賛や尊敬といったところ。F1で活躍するフェラーリに対するアバルトの心情ともとれます。
ところでアバルト695トリブート・フェラーリには付属品も魅力的なものが備わってきます。ナポリにある老舗バッグメーカー、トラモンターノ社製のボストンバッグがふたつとオリジナルのボディカバーやレザーの車検証入れ、専用キー&キーホルダーといった品々です。どれもイタリアン・デザインのオシャレなもの。周辺グッズといっても妥協のないクオリティの高いものが選ばれています。
アバルト695トリブート・フェラーリは569万5000円というプライスタグが付きます。当然フェラーリよりは安いですが、サイズからすると高価なモデルといえます。ですが、今回実車を目の前にし、かつテストドライブしてみると、この金額が妥当であることがよくわかりました。もしかしたらバーゲンプライスかもしれません。細部のつくりはもちろん、いくら自動車業界がコラボ好きでもこれだけの夢の競演は二度とないのでは。
コレクターズアイテムとしても魅力的で、その観点からしてもこのクルマを手に入れる優位性は高いのです。興味を持たれた方は是非キャンセル待ちにトライしてみては? チャンスはきっと巡ってくるはずです!
エンジン種類 | 直列4気筒DOHC+ターボ |
排気量 | 1,368cc |
レイアウト | フロントエンジン前輪駆動 |
最高出力 | 132kW(180ps)/5500rpm |
最大トルク | 250N・m(25.5kgm)/3000rpm |
圧縮比 | 9.8:1 |
変速機 | ATモード付き5速シーケンシャル |
ディメンション | 全長3655×全幅1625×全高1500mm |
ホイールベース | 2300mm |
ハンドル位置 | 左 |
乗車定員 | 4名 |
価格 | 5,695,000 円(消費税込) |
フィアット グループ オートモービルズ ジャパン株式会社
http://www.fiat-auto.co.jp/
Text:Tatsuya Kushima
Photos:Kosuke Mori
2011/03/24
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