“伝説のレース”の遺伝子を受け継ぐ
メルセデス渾身のスーパーカー
“伝説のレース”の遺伝子を受け継ぐ
メルセデス渾身のスーパーカー
“世界三大レース”というのをご存知でしょうか。F1世界選手権のモナコグランプリ、インディーカーのインディ500、そしてル・マン24時間レースがそれにあたります。戦前から行われていたこれらのレースは、どれも自動車の歴史とともに歩んできたといえるでしょう。
そして、これらとは別に“伝説のレース”として自動車史に名を残したレースも存在します。1950~1954年にアメリカ~メキシコ間を走破する公道レースとして開催された”カレラ・パンアメリカーナ・メヒコ”はそのひとつで、近年プライベーターによって復活したようですが、50年代当時のそれはいまなお伝説として語り継がれています。なんといっても、名車として名高いポルシェ911カレラの車名の由来になったことでも有名なレースですから。
では、”カレラ・パンアメリカーナ・メヒコ”とはどのようなレースだったのでしょう。それはいまからおよそ60年前に、メキシコを縦断するハイウェイの開通を祝ってスタートしました。ワークスでエントリーしたのはメルセデスやポルシェといった錚々たる面々。ところが、公道レースゆえの安全性の低さから事故が多発し、多くの死亡者を出してしまったため、1954年に幕を閉じてしまいました。要するにそれだけ過激なレースだったということです。
今春、そんな“伝説のレース”に採用されたコースの一部を使って、メディア向けのイベントが開催されました。主催はメルセデス・ベンツをブランドとして持つダイムラーAG。日本でも去る6月10日に発表された新型車「SLS AMG」のお披露目に先駆けて、同コースを疾走させたのです。なぜ、同コースが選ばれたかというと、この「SLS AMG」は、”カレラ・パンアメリカーナ・メヒコ”を走った伝説のレーシングカー“300SL”の系譜にあるクルマだから。ちなみに、シルバーのボディとグリーンに塗られたフェンダーを持つ300SLは、1952年の同レースで優勝し、ワークスはワンツーフィニッシュを飾りました。市街地や長く続くワインディングを含む約3100kmのコースを、18時間51分19秒で駆け抜けたというから驚かされます。
さて、同コースでのテストドライブが実現した「SLS AMG」についてご説明しましょう。これはメルセデスAMG社が40年以上に渡る歴史の中で初のAMG専用モデルとして開発した新世代のスーパーカー。同社がモータースポーツ活動を通して培ってきたレーシングカーテクノロジーとメルセデス・ベンツの最先端技術が結集されており、徹底的に軽量化を図ったアルミニウム製スペースフレームはまるでレーシングカーのような構造。そして、エンジンはAMG6.3リッターV8を搭載。一見すると既存のラインナップにあるAMGエンジンのようですが、こちらもレーシングカーのごとくオイル潤滑方式をドライサンプにするなど、かなり手が入っています。そうそう、ガルウィングを持つことも忘れてはならないディテールですね。最高出力こそ50psSLRマクラーレンに届きませんが、プライスは半分以下の2430万円に設定されています。
ちなみに、私はメキシコで丸々二日間、このクルマと時を過ごし、およそ800kmを走りましたが、とにかく感動することばかりでした。イグニッションオンで響き渡るエンジンサウンド、アクセルに対する鋭いレスポンスと加速G、それと軽快なハンドリングは、まさにスーパーカー。軽やかなワインディングでの身のこなしはサイズを忘れるほどです。そして、快適性。これだけのスペックを持ちながら快適なドライブを楽しめるのはクラス一番といえるでしょう。さすがメルセデス! イタリアンエキゾチックカーとの最大の違いはここかもしれません。
メルセデス・ベンツ SLS AMG
全長4,638×全幅1,939×全高1,262mm
エンジン:DOHC V型8気筒
最高出力:420[571]ps/6,800rpm
トランスミッション:AMGスピードシフトDCT7速スポーツトランスミッション
価格:24,300,000円
公式サイト
http://www.mercedes-benz.co.jp/passenger/car_lineup/sls_amg/amg.html
Test Dirve & Text:Tatsuya Kushima(Motor Journalist)
2010/06/24
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