大航海時代にヨーロッパ各国の王侯貴族が作った、「Wunderkammer(ヴンダーカンマー)=驚異の部屋」をご存知でしょうか? 王侯貴族だけでなく、学者や文人の間でも作られていたその陳列室は、奇想を描いた絵画、動植物の標本やミイラ、錬金術の文献など、珍しいものなら分野を隔てずに取り集めていたもので、博物学的な資料であると同時に、見る者の知的好奇心を刺激するインスピレーションの源でもありました。ロンドンの大英博物館も元はハンス・スローン卿のヴンダーカンマーの収集物を基にして作られたものでした。
今回は、こうした“インスピレーション”そのものをビジネスにした興味深いプロジェクト「WyzArtifact(アーティファクト)」をご紹介します。
Communicast サイズ/高さ108mm×幅53mm×厚さ16mm 質量/約350g 連続待受時間/約350時間 連続通話時間/約120分。背面の金属のふたを開けるとそこに電池パックとSIMカードをいれることが可能。手に取った時の喜びが感じられるクラフト感あふれるデザイン。
ライフスタイル家電ブランド「amadana」に携わった元リアル・フリートのチーフエンジニアである桂隆俊氏と、チーフデザイナーである中村直登氏により、2007年に創設された会社Wyzart(ワイザート)によるプロジェクトです。
「百年に一度の経済危機に直面して、多くの企業が今までにない革新的な新商品を実現することを求められていながらも、リスクを考えるとなかなか踏み切れない――。そんな世の中の閉塞感を脱することを目的に『WyzArtifact』は始動しました。それは、単なるプロトタイプを作るのではなく、様々な人々が見たり、体験したりすることで、未来のものづくりに閃きを与えるオブジェクトを創造することでした」と、桂氏は語ります。
「現代社会は、いつでも、どこからでも情報を引き出せる環境が揃いすぎている。今、その場に行かないと経験できないという感覚を、まず味わってもらいたい」
そんな願いが込められた「WyzArtifact」の展示会が2月に行われました。展示室には、得体の知れない物体が4点。まさに今この場でしか体験できない、「ヴンダーカンマー」に迷い込んだかのようです。
その中で、ひときわ注目を集めたのが、世界初の銅100%の携帯電話「Communicast(コミュニキャスト)」。見ての通り、液晶画面なし、数字ボタンなし。ただ“通話のみ”といった電話本来の役割に立ち帰ったこの携帯電話は、手に取ると銅のずっしりとした重みと同時に、手作業で成形された優しい温もりが感じられます。より軽くスリムに、多機能に進化していく現代の携帯電話とは、まったく次元の違うアプローチで作られたこの「Communicast」。昨今のデジタル製品の流れを突き詰めた結果、将来的には自分だけのオートクチュール携帯電話を持てるようになると想定したもので、「一般的に予想される未来像を、いち早く実現する」という「WyzArtifact」の方向性の一つを示したものでもあります。
ちなみにこの携帯電話、一見するとボタンが足りません。しかし、デザイナーいわく、「それを手に取ったユーザーが、使用方法を考え、発見していくプロセス自体も知的好奇心をくすぐるための仕掛けなのだ」と言います。見た目も持った感じもミステリアスなら、使い方までミステリアスなこの携帯。オートクチュールの発想がベースというのにこの不親切さは、挑発的ですらあります。
右写真:Starrydust(スターリィダスト)。「価値が無いと思われている」埃と傷に直進する光を合わせた真暗闇の中で使う照明。約100万円(予価)中央写真:Transchromica(トランスクロミカ)。「光をすくう」という概念を表現した照明。すくった色に応じて光が変化するという人とモノとの新しい関係性を実現。約400万円(予価)左写真:Levitice(レヴィティス)。反重力に着目し、「落ちない」という概念を空間の心地よさとして視覚化したプロダクト。約200万円(予価)
TEL.03-6411-4341
http://www.wyzart.com/#/overview
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