INTERVIEW WITH FAUST
ピュアな瞳と共に海を見つめて
INTERVIEW WITH FAUST
ピュアな瞳と共に海を見つめて
Mephist(以下M):「はぐれ熱帯魚」の救出、おつかれさまでした。
木村:やっぱり海はいいですね。すっかり楽しんでしまいました。スタッフのみなさんたちも楽しんでいただけたようで良かった。
M:今回は、「窓愛園」の子どもたちに楽しんでもらいたいと思っていたはずが、大人たちが一緒に楽しんでしまいましたね。
木村:それも大切なことなんです。大人も童心に帰ってしまう海だからこそ、子どもたちとも打ち解けて、楽しい時間を過ごすことができたと思います。
M:それにしても、千葉の磯に、熱帯魚がいるというのは驚きでした。
木村:夏の間の暖かい海流(黒潮)に乗って、ここまで流れ着いてしまう熱帯魚たちは、あのままいたら、死んでしまう運命にあるんですよ。台風が多い年は、もっと多く流れ着いていることもある。でも今回のように、救いだして水槽に入れてあげれば、アクアリウムの中で生きていけるんです。
M:今回「窓愛園」の子どもたちにアクアリウムをプレゼントすることになりました。熱帯魚も一緒にプレゼントする…という方法ではなく、敢えて、実際に魚を取りに行った理由はなんですか。
木村:子どもっていうのは、飽きっぽいものだと思うんです。僕らも小さいころはそうだったでしょう?与えられただけの熱帯魚だったら「キレイ」「カワイイ」って見ているのははじめだけ。すぐに飽きてしまう。でも、実際に自分で海に行き、その目で泳ぐ姿を見て、捕まえたら、熱帯魚への興味はより深まると思ったんです。実際に生きているものを間近に見ることで、「生命の神秘」「生命の尊さ」というものに気付くこともできるでしょう。
M:確かに、最近では自然に触れる機会が少ない子供たちも多いですよね。「生命が大切」といっても、言葉だけではどうしても伝えきれないものも、実際に目の当たりにすることで、より深く心に届くと思います。
木村:そうなんですよ。実際に、海にも触れて欲しかった。最近では「海は危ないから」といって、やたら子どもを遠ざける大人も多いですよね。夏の海水浴なんて言っても、浜辺でぼんやりしているだけ…という人も多い。でも、海は実際に入って、潜ってみないとその魅力は分からない。シュノーケルをつけて。見てみると、海の下にはまるで違う世界が広がっている。海を遠くから見ているだけでは分からなかった魚たちの存在も分かる。魚たちはとても速く泳ぐから、なかなか捕まえることもできなかったかもしれない。でも、それでもいいんです。捕まえられないのも当たり前ですから。
M:今回、子どもたちは海の凄さを体感したようですね。「こんなに魚がいるなんて知らなかった」という声もありました。アクアリウムを見て「小さな海が園に来たみたい」って言っている子もいましたね。
木村:それが大切なんです。アクアリウムはただのインテリアなんかじゃない。あそこに海の世界を創りだしているんです。このアクアリウムを見るたびに、この魚たちが生きていた海を思い描けるでしょう。あの海を美しく保ちたい。魚たちが住みよい環境を創りたい。そう思うことが、海や地球をめぐる生命の営みそのものへの好奇心につながります。頭だけで「環境問題」を考えるよりも、はるかに身近な問題として、環境への意識が高まると思います。
M:子どもたちは、アクアリウムの前に張りついて離れませんでしたね。
木村:「よく観察して、毎日水槽日記をつけてね」と、伝えているので。早速の報告によると、大きなカエルウオが小さなエビを食べつくしてしまったらしく…(笑)。そんな自然の営みもまた、大切な学びだと思います。また、よく見ていると、魚たちの性格もそれぞれ違うことが分かってきますしね。「今日は、あの魚は強気だな」なんて、その日の気分も見えてくる。そうなると、アクアリウムはもっと楽しい。
M:今後も園の子どもたちと共にアクアリウムを見守っていくと。
木村:もちろんです。近く、水槽の水の交換にも行きたいと思っています。ここで育つ子どもたちの、さらに子どもたち…未来にまで、海の美しさ、素晴らしさが伝わることを楽しみにしています。
木村英智 きむらひでとも
株式会社エイチアイディー・インターアクティカ代表。アクアリウムと呼ぶ水槽に、生態系を維持したままアートとして鑑賞できる世界を構築する唯一のアクアリストとして知られる。六本木ヒルズにて、2007年、08年、09年と行われた「スカイ アクアリウム」と、07年~10年の「東京アクアリオ」の総合プロデューサーとして同イベントを成功に導く。“ラウンジ アクアリウム”“リビング アクアリウム”を提唱し、新たなる価値創造の為に日々活動している。
M:今回、うかがった「窓愛園」。出会いのきっかけは何だったのですか?
糸見:私の友人から紹介されて、数年前に訪れたのがきっかけです。もともと、ハンガリーに住んでいた時から、チャリティに携わっていて、児童養護施設を訪れる機会が多くありました。日本の児童養護施設はどうなっているんだろうと、関心があって。訪れてみたら、アットホームで素敵な園だったので、今回のプロジェクトでぜひ、あの子どもたちの力になりたいと思ったのです。
M:海での子どもたち、とても楽しそうでしたね。
糸見:そうですね。初めて海を見たという子もいました。そういう子たちの表情は、とても可愛くて印象的でした。「日本は島国だから、海なんていつでも見られる」と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはない。ああいう表情を見ると、子どもたちに色々な刺激や知識を提供し、もっと視野を広げてあげることが大切なんだと、心から思います。
M:ご自身も、海にはよくいらっしゃるんですか。
糸見:昔から、泳ぐことはもちろん、潜ることが大好きでした。15年前、内戦真っただ中の旧ユーゴで、スキューバライセンスをとりました。ハンガリーにいた頃は、海に行くために、クロアチア軍の検問を通過しながら向かっていました。今は日本の平和な海で、外房にボディボードをしに行ったり、沖縄でダイビングをしたりしてと、楽しんでいます。
M:海の楽しさを知っているからこそ、子どもたちともすぐに打ち解けられていたんでしょうね。
糸見:うん…でも、園の子どもたちの心の傷に触れることもありました。魚を捕っていたときに、小学校低学年くらいの女の子に「ちょっとどいてね」と言ったら、今にも泣きそうな目で「あたし邪魔?」と、手を握ってきたことがあって…。辛いことがいっぱいあったのかな…と、思うこともありました。
M:でも、最後にアクアリウムを設置したときは、子どもたちは凄くうれしそうでしたね。
糸見:ええ。その笑顔を見て、やっぱりとても嬉しかった。ありきたりな言葉だけど「やって良かった」と思いました。結局、チャリティの原動力ってそこだと思うんです。一言では言えないけれど、「大変」よりも「楽しい」のほうが多い。関わった人みんながハッピーになれることが素晴らしいですよね。
M:今回のチャリティを通じて、子どもたちに伝えたいことは何ですか。
糸見:自分はそこまで出来た人間ではないので、何かを伝えるなんて、おこがましいことはできませんし、したくありません。子どもたち一人一人が、その日の経験や感情を忘れずに、自分へのメッセージを探すことが重要だと思います。自分で考えて見つけたものこそ、将来の糧となると思っていますから。
M:今後は窓愛園に向けて、どのように活動していきたいと考えていらっしゃいますか。
糸見:やってみたいことはたくさんあります。水槽のメンテナンスもあるので、定期的に行くのはもちろん、来年もはぐれ熱帯魚を捕りに行く約束をしたので、まだまだ余裕のあるアクアリウムを、熱帯魚でいっぱいにしたいです。あとは、一緒に料理を作ってみたいし、春になったら遠足や花見なども面白そうですね。今後はより多くのファウストメンバーとも交流を深め、一緒に取り組んでいきたいです。
M:ほかにもご興味のあるチャリティはありますか。
糸見:有森裕子さんが、スポーツを通じて行っている、カンボジアや東ティモールへの支援活動にも注目しています。今は、色んなことをやり過ぎて力を分散するよりも、やはり子どもたちの境遇を少しでも改善することに集中したいです。今後は、アジアやヨーロッパなど、海外での活動も視野に入れていきたいと考えています。
糸見バーリン黎 いとみばーりんれい
ハンガリー政府観光局日本局長。ファウストA.G.社会貢献プロジェクトチーム・キャプテン。
人生のすべてを知ろうとした、賢老人にして愚かな永遠の青年「ファウスト」(作:ゲーテ)。この物語でメフィストとはファウストを誘惑し、すべての望みを叶えようとする悪魔。当クラブ「Faust Adventurers' Guild」においては、Faustの夢と冒険の物語をサポートする案内人であり、彼らの変化や心の動きに寄り添う人物。時に頼れる執事、時に気の置けない友人のような存在は、『バットマン』におけるアルフレッド(マイケル・ケイン)、『ルパン三世』における不二子&次元&五右衛門トリオのようなものか? 今後、Mephistoは各クエストの終わりにFaustの皆さまの心を探りに参ります。どうぞよろしく。
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